ドメインを統合したり、別のドメインへサイトを引っ越しさせたりするとき、一番気になるのは「SEOの評価を落とさずに移行できるかどうか」ではないでしょうか。
せっかく積み重ねてきた被リンクや検索エンジンでの評価が、移行と同時に下がってしまうのは避けたいですよね。
ところが、WordPressサイトならリダイレクト用のプラグインが充実しているものの、静的なHTMLサイトだとどう設定していいか分からない――という方も少なくありません。
本記事では、実際に「旧ドメインから新ドメインへサイトを引っ越しした事例」をもとに、初心者でも理解しやすいように301リダイレクトの設定方法や、サーチコンソールでのアドレス変更、移行時の注意点などを丁寧に解説していきます。
HTMLサイトであっても、大丈夫。やることが分かってしまえば、そこまで難しくはありません。
ドメイン変更を成功させるための具体的な手順や、SEOを落とさずに移行を行うためのポイントをたっぷりとご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読み終える頃には、リダイレクトへの抵抗や不安が解消するでしょう。
ドメイン統合・移行が必要になる理由
ブランド力の集約
企業サイトや個人サイトが複数ドメインで分散している場合、ブランディングの視点から、一つの強いドメインにまとめた方が訪問者にとって覚えやすい場合があります。
たとえば、以下のようなケースです。
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企業Aがサービスごとにドメインを分けていたが、ブランドを統一したい
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複数運営していた個人ブログをテーマ別に統合して、サイトの力を一本化したい
こうしたケースでは、新しいドメイン側にコンテンツを集約することで、被リンクも集まりやすくなり、ドメイン全体の評価が高まりやすいというメリットがあります。
ドメイン管理コストの削減
ドメインが増えるほど、更新料(有効期限切れを防ぐための費用)やSSL証明書の管理、サーバー設定など、運用コストがかさんでいきます。
「必要性を感じないドメインを整理して1つにまとめたい」となるのは、ごく自然な流れです。
URL構造の再設計
コンテンツが増えてくると、後付け後付けでURL構造にムリが生じ、ユーザーやクローラが迷いやすくなる場合があります。
そのタイミングで、新ドメイン+サブディレクトリの形で、整理されたディレクトリ構造を組むことが多いです。
たとえば、
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old.com/
で運営していたいくつかのページを -
new.com/email-marketing/
のようなサブディレクトリに配置して、構造をスッキリさせる
このようにカテゴリごとにわかりやすいURLにまとめるメリットは大きいです。新しいURL階層を設計する段階で、SEOの要素も含めたURL最適化を行いやすくなります。
ドメイン移行におけるSEOの基本知識
301リダイレクトの重要性
新しいURLと旧URLをきちんと紐づけるためには、301リダイレクトが必須です。なぜなら、301リダイレクトには以下の効果があるからです。
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検索エンジンが移行を認識しやすい
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被リンクの評価を新URLに引き継ぎやすい
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ユーザーがブックマークや検索エンジン経由で旧URLにアクセスした場合も、新URLへとスムーズに誘導できる
これが万一「302リダイレクト(仮のリダイレクト)」だったり、「トップページへの一括リダイレクト」だけだったりすると、SEO面で評価を引き継ぐ効率が下がってしまうことがあります。
URLごとの対応関係がベスト
理想は、旧URL → 新URLを1対1で対応させることです。とくにアクセス数が多い主要ページについては、できるだけ対応関係を守るほうがよいでしょう。
たとえば、
old.com/page1 → new.com/page1
old.com/page2 → new.com/page2
このように1ページずつ丁寧にリダイレクトを設定すると、ページ単体で得ていた被リンクや評価をほぼそのまま移行できます。
忙しいときは「トップページへすべて飛ばすリダイレクト」も選択肢に入りますが、可能な限りカテゴリ単位や主要ページ単位のリダイレクトを心がけましょう。
リダイレクト期間の目安
旧ドメインの有効期限が残っている場合は、期限まで301リダイレクト設定を残しておくことが望ましいです。
一般的には3ヶ月〜6ヶ月、長ければ1年ほどは旧ドメインを維持してリダイレクトを機能させたほうが安全だと言われています。
その間に検索エンジンが新URLを完全にインデックスし、被リンク評価を移行先に反映させていきます。
静的HTMLサイトでも簡単にできる!301リダイレクト設定手順
.htaccess
ファイルとは?
Apache(エックスサーバーなど多数のレンタルサーバーで採用)では、ディレクトリ単位でサーバー設定を行う小さな設定ファイルとして「.htaccess」が用いられます。
ファイル名の先頭にドット(.)がついていて見慣れないかもしれませんが、実際にはテキストファイルです。
「.htaccess」で設定できる代表的な内容としては、
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リダイレクト(301, 302など)
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パスワード保護
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gzip圧縮
-
文字コード指定
などがあります。
エックスサーバーでの設置場所
エックスサーバーの場合、ドメインごとに「/ドメイン名/public_html/」のようなフォルダがあるはずです。
そこがWeb公開フォルダ(ルートディレクトリ)になっており、このフォルダ直下に.htaccess
ファイルを置くことでリダイレクト設定が反映されます。
もしもすでに.htaccess
が存在する場合は、該当ファイルをダウンロードし、中身を編集してください。
まだ存在しない場合は、テキストエディタ(文字コードはUTF-8推奨)でファイルを作成し、「.htaccess」という名前でアップロードします。
301リダイレクトの基本コード例
(A)旧URLをすべて新URLのトップに飛ばす場合
RewriteEngine On
RewriteRule ^(.*)$ https://example.com/ [R=301,L]
上記のようにすると、旧ドメインのどのページにアクセスしても、強制的にhttps://example.com/
へリダイレクトされます。簡単ですが、ページ評価はすべてトップページに集まるため、個別ページが持っていた評価はややロスしがちです。
(B)パス以下をそのまま引き継ぐ場合
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTP_HOST} ^(www\.)?olddomain\.com [NC]
RewriteRule ^(.*)$ https://newdomain.com/$1 [R=301,L]
こう書くと、
-
olddomain.com/page1
→newdomain.com/page1
-
olddomain.com/dir/page2
→newdomain.com/dir/page2
のように、パス部分をそのまま新ドメイン側に引き継いでリダイレクトします。URL構造をほぼ同じに保ちたいときに便利です。
(C)サブディレクトリを追加する場合
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTP_HOST} ^(www\.)?olddomain\.com$ [NC]
RewriteRule ^(.*)$ https://newdomain.com/subdir/$1 [R=301,L]
たとえば、
-
olddomain.com/page1
→newdomain.com/subdir/page1
-
olddomain.com/dir/page2
→newdomain.com/subdir/dir/page2
とリダイレクトしたい場合に有効です。今回の例でも、旧ドメインをサブディレクトリに移行するシーンがあれば、このパターンが便利です。
既存の.htaccessがある場合の注意点
古い.htaccess
に、HTTPS強制リダイレクトやキャッシュ設定、圧縮設定などが入っている場合があります。
今回のドメイン移行後は、そもそもコンテンツを旧ドメイン下に残さずリダイレクト専用サイトになることも多いため、基本的に不要な記述は削除して問題ありません。
たとえば以下のようなコードは、旧ドメイン上でコンテンツを表示している場合に必要なものが含まれます。
<IfModule mod_headers.c>
Header Set Vary User-Agent
</IfModule>
<IfModule mod_expires.c>
ExpiresActive On
...
</IfModule>
RewriteEngine Off
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTPS} off
RewriteRule ^(.*)$ https://example.com/$1 [R=301,L]
こちらはキャッシュ設定やHTTPS化のためのリダイレクトなので、新しいリダイレクト設定に書き換える際は、不要な部分を思い切って削除しましょう。
ただし、念のためバックアップを取ってから編集すると安心です。
検索エンジンに正しく移行を伝える方法
Google Search Consoleのアドレス変更申請
旧ドメインも新ドメインもGoogle Search Console(GSC)に登録している場合、「アドレス変更(旧サイトのプロパティから申請)」を行うことで、グーグルへ移行を明確に伝えることができます。
アドレス変更の流れ
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旧ドメインのGSCプロパティにアクセスする
-
サイドバーの「設定」から「アドレス変更」を選ぶ
-
新しいドメイン(またはトップドメイン)を選択する
-
確認を完了する
実は、サブディレクトリ(例:newdomain.com/subdir/
)への移行であっても、GSCでの「アドレス変更」ツール上ではトップドメインを指定する形となります。
サブディレクトリ単位では指定できないことに注意しましょう。
サイトマップの再送信
新ドメイン側(もしくはトップドメインのプロパティ)で、サイトマップ(XML)を登録しておくと、クロールが早まり、新しいURLがスムーズにインデックスされます。
もしサイトマップを自動生成する仕組みがない場合は、オンラインのサイトマップ作成サービスなどを使って用意し、サーバーにアップロードしましょう。
旧ドメインの維持期間
先述の通り、旧ドメインは有効期限が切れるまでは極力維持しておくと安心です。少なくとも数ヶ月、長ければ1年程度維持しておくことで、クローラーが全ページをしっかりと巡回し、新URLに評価を移行させてくれます。
急いで旧ドメインを削除したりすると、検索結果にまだ古いURLが残っている段階でリダイレクト先がなくなる状態になってしまい、SEO面での損失が大きくなるおそれがあります。
初心者がつまづきがちなポイントと対策
すでにWordPressなどのCMSを想定している情報しか見つからない
ネット上では「WordPressのプラグイン(Redirectionなど)を使おう」という情報が多いですが、HTMLサイトでもまったく同様の手順で.htaccessさえ触れればリダイレクトは可能です。
むしろWordPressの仕組みに左右されないので、静的サイトのほうがシンプルなケースもあります。
リダイレクトを設定しているのに上手く飛ばない
.htaccess
の書き方やアップロード場所の間違いが大半です。必ず
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文字コードはUTF-8
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拡張子は「.htaccess」
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アップロード先は「/public_html/」など、そのドメインのルートディレクトリ
この3点を確認しましょう。また、RewriteEngine Onが複数書かれていて、どこかで書式が競合していると、意図しない動作が起こることもあります。
アドレス変更ツールでサブディレクトリを選べない
Google Search Consoleの「アドレス変更」は、ドメイン単位でしか動作しません。サブディレクトリへの移行であっても、「新しいサイト」としてはトップドメインを指定する形になるのが普通です。
もし新ドメインを「トップ」で登録済みなら、そのままそれを選択すればOK。
サブディレクトリ用に別途プロパティを作る必要はありません(任意で作成しても問題ありませんが、運用が煩雑になります)。
実際の成功事例 – 具体的な流れ
ここでは、具体的に「old.com
→ new.com/subdir/
」へ移行した事例をまとめます。
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新ドメイン上にサイトデータをアップロード
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新しいドメイン(
new.com
)のサブディレクトリ(/subdir/
)に旧サイトのファイルを配置 -
ページが正常に表示できるか確認
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旧サイト(old.com)のバックアップを取る
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FTP経由などで、旧サイトのデータをダウンロードし、ローカルまたは別フォルダに保管
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何かトラブルがあっても旧データがあれば復旧可能
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旧サイトの
.htaccess
を作成・編集-
以下のようなコードを書き込む
RewriteEngine On RewriteCond %{HTTP_HOST} ^(www\.)?old\.com$ [NC] RewriteRule ^(.*)$ https://new.com/subdir/$1 [R=301,L]
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動作チェック
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ブラウザで
old.com/page1.html
などにアクセス -
new.com/subdir/page1.html
にリダイレクトされるか確認
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サーチコンソールで「アドレス変更」
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旧ドメインのプロパティで、新ドメイン(トップドメイン)を移行先として指定
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サイトマップを新ドメイン側で送信
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旧ドメインの維持
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有効期限切れまでは基本的に301リダイレクト設定を残しておく
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少なくとも3ヶ月~半年以上は継続が望ましい
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これだけの手順で、ユーザーも検索エンジンもスムーズに移行先へ誘導できます。移行完了後、検索結果に表示されるURLが徐々に新ドメインに切り替わっていくのを確認できます。
まとめ
ドメイン移行をする際の最大のポイントは、いかにSEO評価を落とさず、かつユーザーをスムーズに新しいページへ誘導するかです。
そのためには、正しい301リダイレクトとGoogle Search Consoleでのアドレス変更通知が欠かせません。静的HTMLサイトであっても、.htaccess
の設定さえしっかり行えば難しくありません。
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301リダイレクトを使う理由
恒久的な移動を示すことで、旧ページの被リンクやSEO評価を新ページへ引き継ぎやすくします。 -
できる限り個別ページ対応を推奨
時間や手間の制約がある場合はカテゴリ単位、最悪トップページへの一括転送という選択肢もあります。 -
旧ドメインはなるべく長めに維持
期間をかけてクローラーとユーザーが完全に新URLに移るまでリダイレクトを機能させると、評価のロスを最小限にできます。 -
サブディレクトリへの移行でも問題なし
「newdomain.com/subdir/
」を新URLとして活用する場合も、.htaccess
の書き方を少し工夫すればスムーズにリダイレクト可能。Search Consoleではトップドメインを移転先として指定すればOKです。
今回の記事で紹介した手順は、実際に行った移行作業をもとにまとめています。
HTMLサイトの移行でも、ポイントを押さえれば怖くない。サイトをまるごと移転してもユーザーとSEOを失わないためのノウハウが詰まっています。ぜひ本記事を参考に、ドメイン移行や統合をスムーズに進めてみてください。
今後のサイト運営で迷いが減り、ドメインをスッキリと一本化できることで、サイト全体のブランディング強化にもつながるはずです。
もし、この記事を読んでも疑問が残る場合は、「どのURLをどのURLへリダイレクトさせればいいの?」という具体的な対応表を先に作ってみるのもおすすめです。その上で.htaccess
に書き込むルールを整理すれば、作業が一気に楽になりますよ。
一歩ずつ着実に進めていけば、あなたのサイトもきっとより強く、よりわかりやすく進化していくことでしょう。あなたのサイト移行がうまくいくことを願っています。
これを機に、あなたのサイトのドメイン整理やリニューアルが成功し、さらなる飛躍に繋がりますように!