文字起こしを生成AIに貼り付ければ議事録はすぐ完成する、と思って試してみたら、まだ決まっていない案が決定事項に並んでいた。そんな経験はないでしょうか。
議事録づくりは一度の依頼で終わらせず、整理・要約・分類・タスク抽出・確認と工程を分けた方が、ずっと確認しやすくなります。
工程ごとのプロンプト例と、入力前に押さえたいデータの扱いもまとめました。

生成AIの議事録は「一度で完成」ではなく工程を分ける
「議事録を作って」とだけ頼んでも、読みやすい文章は短時間で出てきます。困るのは、その読みやすさのせいで中身の誤りに気づきにくいことです。
会議中に出ただけの提案が決定事項に入っていたり、誰も引き受けていない担当者や期限が書き足されていたりすると、そのまま参加者へ共有するわけにはいきません。
そこで、議事録を一度で完成させてもらうのではなく、次の工程を一つずつ手伝ってもらうのがおすすめです。
- 文字起こしを読みやすく整える
- 会議全体を要約する
- 決定事項、提案、未決事項を分ける
- 担当者と期限を抽出する
- 人が元の発言と照合する
工程を分けるときに最初に決めておきたいのが、「どうなれば成功か」という基準です。
プロンプトの基本は、頼む作業、判断に必要な背景、欲しい出力の形をはっきり伝えることですが、成功条件が曖昧なままだと、出力のどこを確かめればよいかも決まりません。
議事録なら、文章が自然かどうかは条件の一部にすぎないんですよね。決定事項と提案が分かれている、担当者と期限を推測で埋めていない、不明な箇所が見える、元の発言へ戻って確かめられる。
こうした条件を先に決めておけば、出力を見るときの目線が定まります。
AIの出力は完成版ではなく、確認作業を始めるための下書きとして扱いましょう。
AIへ渡す前に文字起こしと利用条件を確認する
プロンプトを工夫する前に、入力する文字起こしそのものを確認しておきましょう。
録音や文字起こしの手段は、会議ツールの機能、音声入力、利用を認められた文字起こしサービス、手作業のメモなどから選べます。この記事で扱うのは、すでに手元にある文字起こしを整理する工程です。
文字起こしに顧客名や連絡先、契約内容、未公開情報が含まれているなら、使う生成AIへ入力してよいかを先に判断する必要があります。
確認先になるのは、参加者への説明や同意、所属組織の規程、取引先との契約、そして利用サービスの規約やデータ条件です。
入力が認められていない情報は、プロンプトに注意書きを添えても守れません。削除や置換をするか、AIを使わない方法を選んでください。
会議の目的と参加者の役割を添える
文字起こしだけでは、会議の目的や参加者の立場までAIが読み取れないことがあります。実名を出す必要がなければ、次のような情報を短く添えておけば十分です。
- 会議の目的
-
新サービスの公開日と担当作業を決める
- 参加者の役割
-
進行役、制作担当、確認担当
- 出力の読者
-
会議の参加者
- 欲しい項目
-
要約、決定事項、未決事項、担当者、期限
- 禁止事項
-
文字起こしにない事実を補わない
誰向けに、何のために、どの形式で出すかを伝えておけば、出力が目的からずれたときも直す場所を見つけやすくなります。
入力してよい情報だけに絞る
文字起こしを丸ごと貼る前に、議論に関係のない個人情報や機密情報は取り除いておきましょう。
氏名を「担当者A」、会社名を「取引先X」、案件名を「案件Y」のように置き換えても、議論の流れは追えることがあります。
ただし、匿名化すれば必ず入力してよい、というわけではありません。発言の内容や複数の情報を組み合わせると、関係者を特定できてしまう場合もあります。判断に迷う情報は入力せず、組織のルールや契約上の扱いを確かめてからにしましょう。
生成AIで議事録を作る5つの手順
工程を分けるといっても、毎回すべてを丁寧にこなす必要はありません。大切なのは、一つの工程の出力を確かめてから次へ進むことです。
早い段階で誤変換や分類のミスを見つけておけば、後の要約やタスク表にまで誤りが広がるのを防げます。
1. 文字起こしを読みやすく整える
最初の工程では要約をせず、文字起こしを確認しやすい形に整えるだけにとどめます。話者が分かる場合は、発言の先頭に「進行役」「制作担当」のような役割を付けておきましょう。
聞き取れなかった箇所や誤変換が疑われる箇所は、意味を推測して直さず、[聞き取り不明]や[要確認(商品名)]のように印を残してください。
発言の順番を追う必要がある会議なら、時間情報も消さずに残します。「ええと」「その」といった言いよどみを削るときも、意味が変わっていないかは確認が必要です。
ここでの目的は文章を美しくすることではなく、次の要約で参照する材料を見やすくすることにあります。
最初の依頼は、次のように範囲を限定して伝えるとよいでしょう。
以下の文字起こしを、内容を要約せずに読みやすく整えてください。
話者ラベルと発言順は維持してください。
意味が不明な語、固有名詞、数字は推測せず [要確認] と残してください。
元の発言にない情報は追加しないでください。
2. 会議全体の要約を作る
整えた文字起こしをもとに、会議の目的と結論の概要を作ります。細かなタスク表まで一度に求めず、まずは全体像だけを確認する段階です。
この会議の目的、話し合った主な論点、会議終了時点の結論を整理してください。
参加していない人でも流れが分かるように、300字以内でまとめてください。
決定していない内容は、結論として書かないでください。
文字起こしにない理由や背景は補わないでください。
要約が出てきたら、会議の冒頭だけでなく終盤の発言とも照らし合わせてみてください。議論の途中で方針が変わった会議では、最初に出た案だけが結論として残っていることがあるからです。
3. 決定事項・提案・未決事項を分ける
議事録で特に混同しやすいのが、「案として出たこと」と「実施すると決めたこと」の区別です。会話の中では、候補を挙げたあとで保留になったり、条件付きで合意したりすることも珍しくありません。
そこで、AIにも区分を分けて出力させます。
文字起こしの内容を次の4区分に分けてください。
1. 決定事項
2. 提案・アイデア
3. 未決事項
4. 次回までの確認事項
決定を示す発言がない項目は「決定事項」に入れないでください。
条件付きの合意は、その条件も一緒に書いてください。
判断できない項目は [要確認] としてください。
各項目には、根拠となる短い発言または時間位置を添えてください。
根拠となる発言や時間位置を添えさせるのは、AIの説明をもっともらしく見せるためではありません。人が元の文字起こしへ戻り、分類が正しいかを確かめやすくするためです。
示された根拠箇所そのものが文字起こしと一致しているかも、使い始めのうちはあわせて確認しておくと安心ですね。
4. 担当者と期限を抽出する
タスクは、作業内容、担当者、期限、前提条件に分けて表にすると確認しやすくなります。担当者や期限が会話の中で明言されていない場合は、空欄のまま残すよう指定しておきましょう。
会議後に必要な作業を表にしてください。
列は「作業」「担当者」「期限」「前提・確認事項」「根拠箇所」です。
担当者と期限は、文字起こしに明記された場合だけ記入してください。
明記されていない欄は「未定」とし、推測で補わないでください。
提案段階の作業は、確定タスクと分けてください。
「担当者はたぶん進行役」「期限は次回の会議まで」とAIに推測されると、誰も約束していない内容が議事録に入り込みます。
「未定」の欄が残るのは失敗ではありません。会議後に確認すべきことが見えた、という状態なんです。
5. 元の発言と照合する
最後は、AIに再確認を頼むだけで終わらせず、人が文字起こしと照らし合わせます。重点的に見たいのは次の項目です。
- 人名、会社名、商品名
- 金額、数量、日付、時刻
- 決定事項と提案の分類
- 担当者と期限
- 条件付きの合意
- 公開・共有してよい範囲
生成AIの応答は、文章が自然でも不正確な内容を含むことがあります。読みやすく整っていることと、会議で決まった事実と一致していることは別物だと考えておきましょう。
確認が済んだら、修正した箇所を参加者に共有し、必要に応じて担当者と期限の認識をそろえます。正式な議事録の承認者が決まっている組織なら、その手順も省かないでください。
補助的な使い方として、文字起こしと議事録案をもう一度AIへ渡し、次の観点で気になる箇所を挙げてもらう方法もあります。
- 元の文字起こしにない追加
- 抜けている決定事項
- 提案から決定へ書き換わった項目
- 省略された反対意見や条件付きの合意
この比較結果も確認済みとはみなさず、人が該当箇所へ戻るためのチェックリストとして使うのがポイントです。
そのまま調整して使える議事録プロンプト例
一連の工程に慣れてきたら、短い会議であれば次のような一つの型にまとめられます。
いきなり長い文字起こしで使うより、内容を確認しやすい会議で出力項目を調整していくのがおすすめです。
あなたは会議記録の整理担当です。
以下の文字起こしだけを根拠に、参加者向けの議事録案を作ってください。
# 会議の目的
[目的を記入]
# 参加者の役割
[進行役、制作担当、確認担当など]
# 出力形式
1. 300字以内の要約
2. 決定事項
3. 提案・アイデア
4. 未決事項
5. タスク表(作業、担当者、期限、前提・確認事項、根拠箇所)
# ルール
- 文字起こしにない内容を補わない
- 決定事項と提案を分ける
- 担当者と期限は明記された場合だけ記載する
- 不明な固有名詞、数字、分類は [要確認] とする
- 条件付きの合意は条件も残す
- 各決定事項とタスクに根拠となる短い発言または時間位置を付ける
# 文字起こし
[ここに入力]
出力に問題があったときは、全文を作り直す前に、直したい点だけを指定して修正を頼みましょう。
次の3点だけを修正してください。
- 「公開日は10月1日」は提案段階なので、決定事項から未決事項へ移す
- 担当者が明記されていないタスクは「未定」に戻す
- 金額は元の文字起こしと一致しているか再確認し、不明なら [要確認] とする
それ以外の文章と分類は変更しないでください。
修正する対象と変えない範囲を明示しておくと、確認済みの部分まで意図せず書き換わるのを防ぎやすくなります。とはいえ、修正後も元の文字起こしとの照合は欠かせません。
AI議事録で起きやすい4つの混同
工程を分けても、議事録で起きやすいミスにはいくつか決まったパターンがあります。先に知っておけば、確認のときに見る場所を絞り込めます。
- 提案と決定の混同
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「この方法がよさそうです」という発言と、「この方法で進めます」という合意は別物です。条件付きの発言なら、その条件も一緒に残します。
- 担当者や期限の推測
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会議の流れから自然に見えても、明言されていなければ「未定」とします。AIに穴を埋めさせるのではなく、次回までの確認事項として残しましょう。
- 誤変換を含んだままの要約
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固有名詞や数字が誤って文字起こしされていると、要約もその誤りを引き継ぎます。重要な語を先に確認するか、要確認の印を残しておくのが安全です。
- 内部メモと共有用議事録の混同
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会議中には、顧客に見せない検討内容や個人情報、契約上の注意点が出てくることもあります。出力先と閲覧者を決めたうえで、共有版から外す情報は人が確認してください。
個人情報・機密情報を扱う前にデータ条件を確認する
同じブランド名の生成AIサービスでも、個人向けと組織向けではデータの扱いが異なることがあります。分かりやすい例がGoogleのGeminiです。
個人のGoogleアカウントで使うGeminiアプリでは、チャットの一部が品質改善などのために人間のレビュアーに確認されることがあり、Google自身も、見られたくない機密情報は入力しないよう呼びかけています。
一方、対象エディションのGoogle Workspaceで使うGeminiは、やり取りが組織内に留まります。許可なくコンテンツが人間にレビューされたり、組織外で生成AIモデルの学習に使われたりしない扱いです。
とはいえ、「このサービスなら安全」「このサービスは危険」と単純に分けられる話ではありません。
入力した内容がどう扱われるかは、アカウントの種類や契約、管理者やアクティビティ保存の設定、最新の規約によって変わります。
実際に使う組み合わせで、その都度確かめておきましょう。
事業として顧客や取引先の個人情報を含む会議を扱うなら、法令面の注意も押さえておきたいところです。
個人情報保護委員会は、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう注意喚起しています。
実務での判断は、次の順番で進めると迷いにくいでしょう。
- 会議の情報をAIへ入力する必要があるか
- 個人情報や機密情報を削除・置換できるか
- 組織・取引先・契約のルールで利用が認められているか
- 利用するアカウントとサービスのデータ条件を確認できるか
- 出力後の保存先、共有先、削除方法が決まっているか
データの扱いを確認できない場合は、機密性の高い会議には使わないという判断も必要です。

生成AIでの議事録作成が向いている場面・向かない場面
議事録を作れるかどうかより、出てきたものを人が確かめられるかどうかで向き不向きが分かれます。向いているのは、たとえば次のような会議です。
- 文字起こしがあり、元の発言へ戻って確認できる会議
- 定例ミーティングや進捗確認など、出力後に参加者が内容を確かめられる会議
- アイデア整理のように、要約や分類の下書きがあると助かる会議
反対に、次のような会議ではAIに任せる範囲を小さくする必要があります。
- 文字起こしを確認できないまま正式な記録を作りたい会議
- 入力が認められていない機密情報を含む会議
- 言葉の細かな解釈が法的・契約上の判断に直結する会議
- 発言者や数字の誤りを検証できない会議
迷ったときは、入力してよいか、元の発言と照合できるか、最終責任者が確認できるかの3点で判断してみてください。
AIを使わない代替手段
生成AIを使わなくても、共有文書に次の見出しを用意しておき、会議中か終了直後に埋めていく方法があります。
- 会議の目的
- 決定事項
- 未決事項
- タスク、担当者、期限
- 次回までに確認すること
入力に制限がある会議なら、このテンプレートを使って参加者が共同で確認する方が向いています。
短い定例会議では、AIへ渡す準備や確認の手間より、テンプレートを直接埋める方が早いこともあるでしょう。
録音や全文の文字起こしまでは要らない場合は、進行役が決定事項とタスクだけをその場で読み上げ、担当者が確認する方法もあります。
道具を増やすことより、何を記録し、誰が確認するかを決める方が先です。
まとめ
生成AIで議事録を作るときは、「議事録を作って」の一言で済ませず、文字起こしの整理、要約、決定事項と未決事項の分類、タスク抽出、人による確認と工程を分けて進めましょう。
プロンプトには、会議の目的、参加者の役割、出力形式、推測を禁止するルールを入れておきます。担当者や期限が明記されていなければ「未定」、不明な箇所は[要確認]のまま残すのが基本です。
最初に試すなら、機密性が低く、元の発言を確認できる短い会議が向いています。
出力の速さだけでなく、誤りを見つけて直すまでの時間も記録しておくと、自分の仕事で使う価値があるかを判断しやすくなります。

