マーケティングの話をすると必ず出てくるCAC(顧客獲得コスト)っていう言葉があります。簡単に言えば、お客さん一人を獲得するのにいくらかかったか?という数字ですね。
多くの人がこのCACを下げようと必死になって、
「広告費を削減しよう」
「もっと安いメディアを使おう」
なんて単発の施策ばかり考えてしまうんですよね。
でも、ちょっと待ってください。
そもそもCACって一つの施策で決まるものじゃないんです。
例えば、家を建てるときのことを考えてみてください。柱を一本安くしたからって、家全体のコストが劇的に下がるわけじゃないですよね。
基礎工事から屋根工事まで、全体の設計図があって初めて適正なコストが見えてくる。
CACも同じなんです。広告を出す前の準備から、お客さんが実際に購入するまでの全ての接点。この全体像を設計図として捉えないと、本当の改善なんてできないんですよ。
私も昔は「広告費を削れば利益が増える」なんて単純に考えていました。でも実際にやってみると、広告費を削った分だけお客さんも減って、結局利益は変わらないか、むしろ減ってしまったなんてことも。
そんな経験から学んだのは、CACは「点」じゃなくて「線」で考えるべきだということです。
お客さんが最初にあなたの商品を知るところから始まって、興味を持って、比較検討して、購入を決める。この一連の流れ全体を設計することが大事なんですね。
例えば、ある美容室がCACを改善しようとしたケースがあります。最初は「チラシを安く印刷しよう」とか考えていたんですが、全体の流れを見直してみると問題は別のところにありました。
実は、チラシを見て来店してくれたお客さんの8割が、初回限定の安い料金だけ利用して二度と来なかったんです。
つまり、獲得コストの問題じゃなくて、リピート率の問題だったわけです。
そこで、初回限定価格をやめて、代わりに「3回来店で4回目無料」みたいな仕組みに変えたら、結果的にCACは半分以下になりました。
一人あたりの獲得にかかる広告費は変わらないのに、リピート率が上がったことで実質的なCACが下がったんですね。
これって、広告だけ見ていたら絶対に気づけない改善です。
もう一つ、ECサイトの例もお話ししましょう。
このサイトは広告費を月100万円使っていて、月に100人のお客さんを獲得していました。つまりCAC1万円です。
「高いなー」と思って広告を減らそうとしたんですが、よく分析してみると面白いことがわかりました。
サイトに来た人の95%が、商品ページまで行かずに離脱していたんです。トップページがごちゃごちゃしていて、何を売っているのかわからない状態だったんですね。
そこでトップページを整理して、一番売りたい商品を大きく表示するようにしたら、同じ広告費で獲得できるお客さんが倍になりました。
広告は何も変えていないのに、CACが半分になったわけです。こういう例を見ると、CACって本当に全体設計の話なんだなってわかりますよね。
じゃあ、具体的にどうやって設計図を作ればいいのか?
まずは、お客さんの動線を全部書き出してみることです。
・どこで知るのか
・どうやって興味を持つのか
・何を比較するのか
・どこで迷うのか
・何が決め手になるのか
この各ポイントで、どれくらいの人が次に進んでいるのか。数字で把握することが大切です。そうすると、どこがボトルネックになっているのかが見えてきます。
広告で100人集めても、商品ページを見るのが5人しかいないなら、広告を増やすより先にサイトの改善が必要ですよね。
逆に、商品ページを見た人の8割が買ってくれるなら、広告にもっと投資してもいいかもしれません。
つまり、CACの改善は「どこを改善すれば全体が良くなるか」を見極めることから始まるんです。私がコンサルティングをするときも、まず全体の流れを図にして、各ポイントの数字を入れてもらいます。
すると大抵の場合、「ここが問題だったのか!」という発見があります。
広告費ばかり気にしていたけど、実は商品説明が不十分だったとか。価格を下げようとしていたけど、実は信頼性が足りなかっただけだったとか。
全体を俯瞰して見ることで、本当の問題が浮き彫りになるんですね。
最後に、もう一つ大事なことをお伝えしておきます。
CACは業界や商品によって適正値が違います。月額1000円のサブスクと、100万円の高額商品では、許容できるCACが全然違いますよね。
だから、他社の数字と単純に比較するんじゃなくて、自分のビジネスにとって適正なCACはいくらなのか。LTV(顧客生涯価値)と比較して考える必要があります。
LTVが10万円の商品なら、CAC3万円でも利益は出ます。でもLTVが5000円なら、CAC3万円じゃ破産しちゃいます。
このバランスを考えながら、全体の設計図を最適化していく。それがCACマネジメントの本質なんですよね。
単発の施策で一喜一憂するんじゃなくて、全体の設計図として捉える。この視点を持つだけで、マーケティングの成果は大きく変わってくるでしょう。
それでは。

