近年、Webサイトやアプリを制作するプロセスは大きく変化しています。以前はデスクトップにインストールしたソフトウェアを使い、デザイナーが一人で黙々とデザインを作っていました。
ところが、インターネットやクラウド技術の進歩により、デザイン作業はチーム全員でリアルタイムに共有・編集できるようになっています。
そんな時代の流れを大きく牽引しているのが、Figma(フィグマ)とFigJam(フィグジャム)というツールです。
ただ、「FigmaとFigJamって名前も似ていて、何が違うのかよくわからない」「CanvaとかMiroとか、他にも似たようなツールがあるって聞いたけど、どうやって使い分ければいいの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
実際、ツール名が増えれば増えるほど、選択肢は広がりますが混乱もしやすくなります。
本記事では、Figmaがなぜこれほど注目されているのか、FigJamはどんな場面で使うと効果的なのか、そしてMiroやCanva、マインドマップ専用ソフトなど他ツールとの比較を初心者でもわかりやすく説明します。
デザインの知識があまりない方や、これからUI/UXデザインやWeb制作に取り組みたい方でも理解できるように、用語や事例を丁寧に解説していきます。
Figma(フィグマ)とは何か?基礎からわかる魅力と特徴
Figmaの基本概要
Figmaは、ブラウザを使ってデザイン作業ができる「クラウドベースのUI/UXデザインツール」です。インストール不要で、WindowsでもMacでも、さらにはChromebookなどの軽い端末でも動作します。
これにより、場所や端末を問わずチームメンバーが同じファイルを開き、同時に編集したりコメントしたりできるのが大きな特徴です。
UI/UXデザインに特化
FigmaはもともとUI/UXデザイナー向けに開発されました。具体的には、Webサイトやスマートフォンアプリのデザインやワイヤーフレームの作成に最適です。
必要な機能としては、画面遷移やボタン押下時の動きを簡単に設定できる「プロトタイピング機能」や、書き出したい画像アセット(アイコンや背景画像など)をすぐに用意できる機能、そしてエンジニアへスムーズに情報を渡せる「開発者向けハンドオフ機能」などが揃っています。
リアルタイム共同編集
Figma最大の利点としてよく挙げられるのが、Googleドキュメントのように複数人で同時にファイルを編集できることです。
例えば離れたオフィスにいるデザイナーとエンジニアが、同じデザイン画面を見ながら直接修正を加えたり、コメント欄でやりとりをしたりできます。
メールでファイルをやりとりして「今どのバージョンが最新だっけ?」と混乱したり、同じファイルを上書きしてしまったりするリスクがありません。
無料プランでも使える
Adobe製品や一部のデザインツールは有料のサブスクリプションが必要ですが、Figmaは無料プランでも多くの機能が利用できます。
共同編集も無料で試せるので、デザインチーム全員を巻き込むハードルが低く、多くの企業や個人が導入しやすいのも強みです。
ただし、大規模チームでの管理機能やより高度な機能を使いたい場合は有料プランに移行することが推奨されています。
デザインシステムの管理
色・タイポグラフィ(フォントの使い方)・コンポーネント(ボタンやUIパーツ)などをまとめて管理できる「デザインシステム機能」も強力です。
ブランドカラーやフォントスタイルを一括管理し、同じ要素を必要に応じて再利用できるため、大規模プロジェクトほど効率的な作業フローが構築できます。
FigJam(フィグジャム)はどんな時に使う?Figmaとの違い
FigJamはオンラインホワイトボード
FigJamはFigmaと同じ会社が提供する「オンラインホワイトボードツール」です。ブレインストーミング(アイデア出し)や会議用のボード、簡単な図解などに使われます。
Figmaほど精密なデザインができるわけではありませんが、付箋や矢印、イラストなどを自由に配置して、チーム全員が同時に書き込むことで「対面のホワイトボードと同じ感覚」でやりとりできます。
FigmaとFigJamの関係
「Figma」と「FigJam」は一見似たような名前ですが、役割が全く異なります。Figmaは完成度の高いデザインを行うツール、FigJamはアイデアや構想をざっくり可視化するためのツールです。
実際のプロジェクトでは下記のように使われるケースが多いでしょう。
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FigJamでブレインストーミング
チームで付箋を貼りながら、ターゲット分析やサイト構成案の洗い出しを行う。 -
FigJamで簡易的なワイヤーフレーム
いきなりFigmaで精密なデザインを起こすのではなく、ざっくりとページ構成を考える。 -
Figmaで本格的なデザイン
FigJamで固まったアイデアや構成をもとに、細部まで作り込んだUIデザインを仕上げる。
使い分けのポイント
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図形やコメントなどをサクサク使ってアイデアを視覚化したい → FigJam
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ボタン配置や配色などUIを本格的に作り込みたい → Figma
このように、両ツールを併用することで「アイデアを広げる作業」と「アイデアを実装する作業」をスムーズにつなげることができます。
他のツールとの比較①:CanvaとFigmaはどう違う?
Canvaとは?
Canvaは、ブラウザベースで動くグラフィック制作ツールです。SNS用の画像やチラシ、ポスター、名刺、プレゼン資料などを、豊富なテンプレートから簡単に作れる点が最大の魅力です。
デザイン初心者でもドラッグ&ドロップで洗練されたビジュアルが手早く仕上がるため、マーケターや個人事業主にも広く利用されています。
Figmaとの違い
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得意分野
Canvaは主にグラフィックデザイン(チラシ、SNS画像、プレゼン資料など)に強い。一方FigmaはUI/UXデザイン(アプリ・Web画面)に特化している。 -
デザインの自由度
Canvaはテンプレート重視で、初心者でもそれなりの見栄えが作れる。一方Figmaはピクセル単位でレイアウトを組めるため、細かな調整が可能。 -
チームコラボ
Canvaもチームで共有はできるが、Figmaほどリアルタイム性やUI/UX設計の機能が豊富ではない。
どちらを使うべき?
もしあなたがSNS用のバナーやチラシ、プレゼン資料などを「短時間で見栄えよく仕上げたい」という目的ならCanvaがおすすめです。
一方、Webサイトやアプリのインタラクションを具体的に作り込み、プロトタイプとしてクライアントや開発チームに見せたいならFigmaが適しています。
どちらも無料で始められるので、実際に試してから判断してもよいでしょう。
他のツールとの比較②:FigJamとMiroは何が違う?
Miroとは?
Miroは「オンラインホワイトボード」ツールの代表格で、世界中の企業や教育機関で採用されています。
ブレインストーミングからワークショップ、プロジェクト管理のフローチャート作成など、さまざまな場面で使われています。
テンプレートも豊富で、たとえばプロジェクトのロードマップやビジネスモデルキャンバス、マインドマップ、コラボゲームなど、ファシリテーションに便利な機能が多数用意されています。
FigJamとの比較
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連携先の違い
FigJamはFigmaとの連携がスムーズで、デザインワークフローの一部としてとても使いやすい。Miroは単独で多機能なコラボレーションツールとしての完成度が高い。 -
操作性と軽快さ
Miroは機能が豊富なぶん画面がやや重くなる場合もある。一方FigJamはシンプルで軽快、デザイナーに馴染みやすいUIが特徴。 -
用途の広さ
Miroは大規模なワークショップや、複数部署が集まる会議などでも使いやすい。一方FigJamはデザインを始める前のブレストや構成整理と相性が良い。
どう使い分ける?
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Webサイトやアプリのデザインが主目的 → FigJam
その後Figmaに移行する流れがスムーズだから。 -
ファシリテーションやワークショップの効率化 → Miro
投票機能や進行補助の機能が充実しているから。
もちろん、どちらも無料プランがあるので試した上で使い勝手を比較してみるのも良い方法です。必要な機能が揃っているかどうか、プロジェクト規模やチーム構成によって選びましょう。
マインドマップはFigJamやFigmaでもできる?専用ツールとの違い
マインドマップ専用ツールの魅力
マインドマップ専用ツール(XMind、MindMeisterなど)は、ノードやブランチを自動で整列してくれる機能、折りたたみや展開が自由にできる機能、テンプレートによる視覚的な効果などに優れています。
大規模なアイデア整理や、階層構造がどんどん深くなるような場面では専用ツールが使いやすいでしょう。
また、プレゼンモードや書き出し形式も豊富なので、完成品としてクライアントや社内メンバーに見せる際にも便利です。
FigJamのマインドマップ機能
FigJamはホワイトボードなので、マインドマップ的に付箋や矢印を配置し、中央のテーマから放射状にアイデアを広げることも簡単です。
チームでリアルタイムに書き込めるため、ブレインストーミングの一環としては十分機能します。ただし、自動整列や階層管理などはないため、大規模・複雑なマインドマップには向きません。
どちらを選ぶべき?
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アイデア出しや軽めの構造化 → FigJam
手描きのように付箋を配置して考えたい、コラボしながらわいわい思考を広げたい。 -
厳密なノード管理や細かな階層 → 専用マインドマップツール
数百個のノードがあるような複雑なテーマを扱いたい場合など。
もし大きな会議でマインドマップを使う機会が多いなら、一度XMindやMindMeisterを試してみると作業効率の違いを実感できるでしょう。
具体例でわかるFigmaとFigJamの活用シナリオ
Webサイトの制作プロセス例
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テーマやターゲットの整理(FigJam)
まずFigJamを開き、中心に「新サービス名」を書き、その周りにターゲット層の年齢や職業、困りごとなどを付箋で貼っていく。どんな機能や情報が必要かをチームで話し合いながら、矢印やコメントで意見を追加。
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ざっくりとしたレイアウト案(FigJam or Figma)
すでにFigJam上で手描き風ワイヤーフレームを作ってもよいし、早い段階でFigmaに移行してしまっても構わない。最初はFigJamで超ラフなレイアウト(どの位置にどの要素を置くか)だけ描き、ある程度方向性が固まったらFigmaで具体的に画面構成を作る。
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UIデザインとプロトタイプ作成(Figma)
Figmaで実際のヘッダー画像やフォント、カラーなどを設定し、画面を作り込む。ページ遷移やボタンクリック時の動きをプロトタイプで設定し、実際にクリックしながら完成イメージを体験できる。 -
クライアントやチームへの共有(Figma)
「Share」機能を使い、URLを送るだけでクライアントや他の開発者が画面をプレビューし、コメントや指摘を入れられる。デザイン・開発間のコミュニケーションも、Figma上でピンポイントにデザイン要素を指摘できるためスムーズ。
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最終調整とリリース準備(Figma + 実装チーム)
開発者は寸法やカラーコード、書体の情報をFigmaから直接確認し、コーディングに活かせる。デザイナーとエンジニアが同じ画面を見て修正を進められるため、完成度が高いサイトがスピーディにリリースできる。
初心者がつまずきやすいポイントと解決策
1. 最初の設定やアカウント作成
FigmaとFigJamを使うには、Figmaのアカウントを作成する必要があります。英語のUIに戸惑うかもしれませんが、比較的シンプルで無料プランもあり、導入は難しくありません。
メールアドレスかGoogleアカウントでの登録が一般的です。
2. どこまでFigJamでやるべきか
アイデアをFigJamでまとめることはいいですが、あまり細かいUIをFigJamで作ろうとすると逆に効率が下がります。
ブレストや大まかな構造把握が目的ならFigJam、細部まで精密に作り込むのはFigmaと切り替えましょう。
3. レイヤーやコンポーネントの管理
Figmaの中で複数のフレーム(画面)やコンポーネント(再利用パーツ)を作る場合、レイヤーを整理しないと後から分かりづらくなります。
慣れるまでに時間はかかりますが、グループ名やレイヤー名を適切につける癖をつけると、チーム全員が見やすくなります。
4. 他ツールとの連携
「Canvaのデザイン素材をFigmaに移したい」「Miroで作成したフローチャートをFigJamで続きたい」といったケースでは、画像として書き出して張り付けるといった作業が必要です。
ツール間で完全に互換性があるわけではないので、シーンによっては多少の手間や再作業が発生します。
まとめ
FigmaやFigJamは、これまでのデスクトップ中心のデザインツールとは一線を画す「クラウドベースのリアルタイム共同編集ツール」です。
特にUI/UXデザインの現場では、Figmaの導入がもはや当たり前と言えるほど普及が進んでいます。
一方で、FigJamはFigmaの補完役として、アイデア出しやホワイトボード的な作業を得意とするツールとして急速に注目を集めています。
しかし、世の中にはCanvaやMiro、そしてマインドマップ専用ツールなど、似たような機能を持ったサービスが数多く存在します。
結局、どのツールが一番良いのか迷ってしまうかもしれません。答えは「自分の目的・チーム構成・プロジェクトの規模」によって変わります。大まかな目安としては以下が参考になるでしょう。
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WebやアプリのUI/UXデザインを本格的にしたい → Figma
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ブレインストーミングや会議用のホワイトボードがほしい → FigJam or Miro
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SNS用画像や資料をきれいに作りたい → Canva
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複雑な階層構造のアイデア整理 → マインドマップ専用ツール
実際には、2〜3種類のツールを併用することが多いです。例えば、SNS画像はCanvaで作り、WebデザインはFigmaでまとめ、最初のアイデア出しはFigJamで行うという具合です。
最初から完璧に使い分けを意識する必要はありません。無料プランで試しながら、自分やチームに合った使い方を模索してみましょう。
最後に、どのツールを選ぶにしても、オンライン共同編集のメリットを最大限活かすことが大切です。
クラウド上でいつでもファイルにアクセスできる環境を整えたり、共同編集でコメントを積極的に活用したりすることで、コミュニケーションコストが大幅に削減され、プロジェクトのスピードと品質が格段に高まります。
FigmaやFigJamのようなツールを上手に使いこなすことで、これまでの「デザイナーだけで閉じていた作業」がチーム全員のアイデアとコラボレーションで進められるようになるのです。
もしまだFigmaやFigJamを使ったことがない方は、ぜひ一度試してみてください。クラウドのデザインツールを体験するだけで、これまでのデザイン作業との違いに驚くはずです。
オンラインコラボレーションの可能性を存分に楽しみながら、あなただけの効果的な使い方を見つけてください。
きっと、チームでの作業効率が上がり、より魅力的なデザインやアイデアが生まれることでしょう。