WordPressでブログやWebサイトの運営をしていると、「ブロックエディター(Gutenberg)に移行しよう」と言われながらも、なかなか踏み切れないことはありませんか?
これまで長らく使われてきた「クラシックエディター(テキストエディター)」は、シンプルな使い心地と慣れ親しんだ操作性から、いまだに多くのユーザーから支持されています。
しかし、WordPressがバージョン5.0以降で新たに導入したブロックエディターは、公式としても“今後のスタンダード”と位置づけられており、避けては通れない流れになっています。
ところが、実際にブロックエディターを触ってみると、
- 「テキストをコピペするだけでも思うようにブロック分割されない」
- 「レイアウトを整えようとするとブロックが乱立して混乱する」
- 「シンプルな文章作成しか必要ないのに、ブロック単位の管理は煩わしい」
など、戸惑いを覚える方も多いでしょう。また、組織やセキュリティ上の都合でプラグインを自由に追加できない環境にいる場合、「クラシックエディターのままが楽なのでは?」と感じるかもしれません。
しかしながら、近い将来にWordPress公式がクラシックエディターのサポートを完全に打ち切る可能性は依然としてあるため、「早めにブロックエディターへ移行したい」「メリットが本当にあるなら、そろそろ使いこなしてみたい」と考える方も増えています。
本記事では、これまでの会話で挙がった「ブロックエディターは使いづらい」「テキストエディターのほうが慣れている」といった悩みを振り返りながら、ブロックエディターのメリットや活用法を分かりやすく、かつ読み応えのある形でまとめました。
初心者の方や、これからブロックエディターへの移行を真剣に検討している方のヒントになれば幸いです。
1. なぜブロックエディターへの移行が叫ばれるのか
WordPressは世界中で最も利用されているCMS(コンテンツ管理システム)であり、その大きな理由のひとつは「簡単な操作でサイト更新ができる」という点にありました。
バージョン5.0で登場したブロックエディター(Gutenberg)は、従来のクラシックエディターと違って「ブロック」という単位で文章や画像などを配置する方式が採用されています。
これは、いわゆる“ページビルダー”的な設計思想で、初心者でも見た目を重視したレイアウトを作りやすくする狙いがありました。
しかし、なぜWordPressはこれほどブロックエディターを推し進めるのでしょうか?
- レイアウトの自由度を高め、ノーコード化を促進する
- プラグインに頼らずとも、複雑な表現や装飾が可能になる
- WordPress全体をもっと“モダン”で未来志向にアップデートする
これらは単なるデザイナー向け機能の充実だけでなく、より多くのユーザーが自由にコンテンツを発信できるようにするという意義も持っています。
企業や組織がテーマを変えるとき、従来のクラシックエディター対応よりも、ブロックエディター対応のテーマを前提として設計が行われるケースが増えました。
最新バージョンのWordPressやテーマでは、ブロックエディターと相性の良い機能が次々と追加されているため、最新の機能を最大限活かすにはブロックエディターが不可欠という状況になりつつあります。
2. 「ブロックエディターは使いにくい」という声の理由
一方で、ブロックエディターには「何だか分かりづらい」「逆に作業が増えた」といったネガティブな声も根強いです。
なぜこういった声が出るのか、主な理由を整理してみましょう。
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慣れの問題
長年使い慣れたテキストエディター(クラシックエディター)から、ブロック単位の操作に切り替わることで大きな戸惑いが生まれます。文章を一括でペーストするだけで済んでいた作業が、ブロックが分かれてしまうことで「思い通りにまとまらない」「微調整に手間取る」といった新たな課題となりやすいのです。 -
初期の不具合の影響
ブロックエディター導入初期(WordPress5.0前後)は、不具合やバグ報告も多く、「こんなに使い勝手が悪いものならテキストエディターのままでいいや」と感じたユーザーが多かったのです。その際のマイナスイメージを引きずって「ブロックエディター=使いにくい」という固定観念が続いているケースもあります。 -
記事更新がテキスト中心のサイト運営
画像や装飾、レイアウトをあまり凝らずに、テキストベースで淡々と記事を更新するスタイルでは、ブロックエディターで得られる恩恵があまり実感できません。特にGoogleドキュメントやテキストエディタで原稿を作成して、そのままペーストするだけなら、従来のクラシックエディターのほうが相性が良い場合も多いのです。 -
レイアウトが自動変換されすぎる戸惑い
ブロックエディターはMarkdown記法などを自動検出して、見出しやリストを変換する機能が備わっていますが、思わぬところで改行やブロック分割が行われ、逆にストレスを感じる方もいます。
以上のように、ブロックエディターの方がメリットを享受できる利用形態(デザイン性重視、複数コンテンツの配置など)が明確にある一方、単にテキストを入稿するだけという方々にとっては、慣れずに余計な手間を増やしてしまう欠点も見えてくるわけです。
3. 入稿時に気をつけるポイントと工夫
それでも、プラグインの導入が難しかったり、Markdownに完全対応したいわけではない場合、どうやってスムーズにブロックエディターへ文章を貼り付けるのでしょうか?
以下に代表的な工夫をまとめます。
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段落ごとに空行を入れる
WordPressのブロックエディターでは、改行ルールが非常に重要です。文章をまとめてペーストすると、意図しないブロックが作られてしまうことがあるので、あらかじめGoogleドキュメントやテキストエディタ側で段落ごとに空行を1行入れておくと、適切に段落(ブロック)として分割されやすくなります。 -
見出しはMarkdown風記法で
# 見出し1
、## 見出し2
といった形で記号を入れてから貼り付けると、ブロックエディター側で自動的に「見出しブロック」に変換されやすいです。見出しをしっかり構造化しておくことで、後から修正するときも見通しが良くなります。 -
箇条書きやリストも同様
- 箇条書き
、1. 番号付き項目
など、Markdown的な記法でリストを作ってから一括貼り付けすると、リストブロックに自動変換してくれます。テキストエディタで「・」「1)」など独自の装飾を入れるよりも、WordPress側が理解しやすい形式にしておくとスムーズです。 -
引用ブロックへの変換
>
を先頭につけると、その行が「引用ブロック」として変換されやすくなります。文章内の引用や補足がある場合に活用しましょう。
こうした小さな工夫だけでも、「ブロックエディターに貼り付けたときのズレや手間」を大幅に減らせるようになります。
「ブロックエディターは難しそう」と感じる方は、まずは少しだけMarkdown記法を意識してテキストを整えることから始めてみるとよいでしょう。
4. セキュリティなどの理由でプラグインを入れられない場合
クラシックエディターからブロックエディターへの移行時に、よく勧められる方法の一つとして「Markdown対応プラグインを導入してテキストで入稿しやすくする」や「Classic Editorプラグインで旧エディターを維持する」といった選択肢があります。
しかし、会社や組織のポリシー、セキュリティ面の縛りなどで「自由にプラグインをインストールできない」「外部サービスとの連携が難しい」というケースも珍しくありません。
こうした環境下では、基本的にWordPress標準機能だけでなんとかやりくりする必要があります。具体的には次のようなアプローチが現実的でしょう。
- Markdown風にあらかじめ整形したドキュメントをペーストする
(前述した通り、見出し・リスト・引用などを簡単にマークアップしておく) - 画像や表などはWordPress上で挿入・調整
Googleドキュメントやテキストエディタで画像を貼り付けても、そのままブロックエディター側で再現されるわけではありません。必要に応じてWordPress上で「画像ブロック」や「テーブルブロック」を追加し、最低限の調整を行う形になります。
大がかりなレイアウトを駆使する必要がなく、文章と数枚の画像だけで構成されるようなサイト運営であれば、この方法で十分対応可能です。
ブロックエディターのメリットを最大限活かすというよりは、最低限の使い方で乗り切るイメージではありますが、プラグインを増やせない環境ではこれがベストな選択になるでしょう。
5. ブロックエディターで得られる具体的なメリット
「ブロックエディターを使うメリットが、なかなか実感できない」という声はよく聞かれますが、実際には以下のような長所があります。
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ビジュアル的にリッチなコンテンツが作りやすい
文章以外にも画像や動画、表(テーブル)、ボタン(CTA)などをドラッグ&ドロップやクリック操作だけで挿入できます。HTML/CSSの知識がほとんどなくても、レイアウトをある程度きれいに整えられるのはブロックエディターの強みです。 -
再利用ブロックによる効率化
例えばよく使う定型文やバナー、注意書きなどを「再利用ブロック」として登録しておくと、別記事で使うときにワンクリックで呼び出すことができます。修正が必要になったときも再利用ブロック側を一度更新すれば、すべての記事に反映されるので、全ページ統一のCTAボタンや共通メッセージを使う場合に非常に便利です。 -
コンテンツごとに整理しやすい構造
ブロックエディターは、文字通りブロック単位で管理するので、各パーツを視覚的に把握しやすくなります。特に複数の画像とテキストが入り混じる記事では、クラシックエディターのようにHTMLを確認しながら調整する煩雑さが少なく、移動や入れ替えが簡単に行えます。 -
モバイル対応のしやすさ
ブロックエディターで作ったコンテンツは、基本的にレスポンシブ(モバイル対応)を前提とした構造になっています。テーマにもよりますが、多くの場合、PCで整えたレイアウトがスマホでも破綻しにくいというメリットがあります。 -
WordPressの将来的な機能アップデートを活用できる
WordPressは今後さらにブロックエディターの機能を拡充していくとアナウンスしており、最新テーマやプラグインはブロックエディターとの連携機能を強化しています。最先端の機能を使ってサイトを魅力的にしたい方にとっては、ブロックエディターが標準の環境であることがほぼ必須となるでしょう。
6. 将来を見据えたWordPressの動向
2024年末まで、WordPress公式は「Classic Editor」プラグインのサポートを延長すると発表していました。ただし、その後さらに延長されるかどうかは明言されていません。
世界中にクラシックエディター愛用者がおり、プラグイン利用者数も数百万単位と言われることから、すぐに完全打ち切りという可能性は低いかもしれませんが、徐々にブロックエディターへ誘導していくのは間違いないでしょう。
現時点でも、WordPressの主要な機能追加やテーマの進化はブロックエディター前提で進められています。
フルサイト編集(FSE: Full Site Editing)の概念や、新しいデザインツールの統合など、ブロックエディターを軸としたWordPressの拡張が今後さらに加速する見込みです。
こうした流れを踏まえると、近い将来、
- クラシックエディターが使えないテーマや機能が増える
- ブロックエディターでないと最新のSEO施策やサイト施策を柔軟に実装しづらい
- セキュリティやパフォーマンス面で旧エディターが足かせになる
といった事態も考えられます。
今はまだ従来のやり方で運用できていても、5年先、10年先を見据えるなら、徐々にブロックエディターへの理解を深めておいたほうがサイト運営にとって長期的にプラスと考えられます。
7. それでもクラシックエディターを選ぶ場合の考え方
とはいえ、すべてのサイト運営者がブロックエディターへ早急に移行する必要があるわけではありません。
特に以下のようなケースでは、あえてクラシックエディター(テキストエディター)を続行する選択肢もまだアリです。
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完全にテキスト中心で、装飾をほとんど必要としない
ニュース記事やコラム記事で、ほぼ文字情報のみの場合は、無理にブロックを使わなくても生産性は下がらないという意見も多いでしょう。クラシックエディターの方がシンプルで書きやすいのが事実です。 -
大規模リニューアルのタイミングではない
企業や団体のサイトの場合、大きなデザイン変更は数年スパンで行われることもあります。すぐにブロックエディターにするより、次のリニューアル計画が具体化した段階でテーマを一新し、同時にブロックエディターへ完全移行したほうがスムーズなこともあります。 -
既存の記事の編集負荷が高い
何千、何万という記事をブロックエディター化しようとすると、すべてを手直ししなければいけなくなる場合も。現時点でのコストに見合わないと判断されれば、クラシックエディターを使い続ける選択肢をとりつつ、新規記事から徐々にブロックエディターを採用するといった段階的な方法もあります。
いずれにせよ、クラシックエディターの公式サポートが突然終了する恐れは常に頭に置いておきましょう。今は問題なくても、何かのアップデートを機にクラシックエディターが使えなくなるリスクは否定できません。
そのとき慌てて全記事を手直しするよりは、今から少しずつブロックエディターに慣れておくほうが、いざというときの混乱が少なくなるはずです。
8. ブロックエディターへの移行を少しずつ進めるためのステップ
「それでも急に全部ブロックエディターに変えるのは怖い」という方は、以下のステップを踏むことで、段階的に慣れていくことができます。
ステップ1:新規記事だけブロックエディターを使ってみる
クラシックエディターを使う既存記事には手を加えず、まずは新しい投稿を作るときにだけブロックエディターを試してみましょう。レイアウトや装飾をいろいろ試しながら、自分のサイトに合った活用方法を探ります。
ステップ2:定期的に作成するコーナー記事をブロックエディター化
ニュース記事やリリース記事など、定型的なコーナーをブロックエディターで作るようにすると、再利用ブロックのメリットを活かせます。毎回同じような構成の記事を書く際の作業時間がどのくらい節約できるかを実感しやすくなります。
ステップ3:再利用ブロックを積極的に試す
「お問い合わせはこちら」や「関連リンクはこちら」といった共通パーツを再利用ブロックに登録してみてください。修正が必要なときに、一括で更新できる利便性はかなり大きいです。これを経験すると、ブロックエディターの面倒くさそうなイメージが一変することも珍しくありません。
ステップ4:徐々に既存記事も切り替えてみる
過去の記事をリライトしたり、アップデートするときがあれば、そのタイミングでブロックエディターに変換してみましょう。段階的に既存記事をブロックエディター化していくことで、大規模な一斉移行よりもリスクや手間を分散できます。
このように、小さな経験を積み重ねることが、ブロックエディターへの苦手意識を克服する大きなポイントです。最初から完璧に移行しようとせず、じっくり慣れていくことをおすすめします。
9. まとめ
WordPressのブロックエディター(Gutenberg)は、登場以来さまざまな賛否がありながらも、今やWordPress本体の中心的機能として進化を続けています。
一方、依然としてテキストエディター(クラシックエディター)に強い愛着を持つユーザーは多く、プラグインを使って旧エディターを維持する事例も数多く存在します。
実際、シンプルなテキスト入稿を中心にサイト運営している方にとっては、ブロックエディターの魅力が直感的に伝わりにくいのも事実です。
しかしながら、将来のWordPressや最新テーマとの相性、新機能への対応を考えると、やはりブロックエディターに慣れておくことは避けられない流れといえます。
レイアウトの自由度や再利用ブロックの効率化など、テキストエディターにはないメリットも多数存在し、上手に使いこなせばサイト運営をさらに加速させることが可能です。
- コピペ時に段落・見出し・リストをMarkdown風に整える
- 画像や表などはWordPress上で配置しなおす
- 共通パーツは再利用ブロックで一括管理
といった、ちょっとした工夫だけでもブロックエディターへの移行ハードルは大きく下がります。
大規模サイトであっても、新規記事や特定のコーナーから少しずつ移行する方法をとることで、負担を最小限に抑えることができます。セキュリティなどの事情でプラグインを導入できないケースでも、WordPress標準機能だけで十分対応可能です。
今はクラシックエディターのほうが慣れていて快適だとしても、5年後、10年後に同じ環境が続いているとは限りません。WordPressコミュニティや開発の方向性を見据えると、ブロックエディターでの運用が当たり前になる未来が見えています。
ぜひ本記事で紹介したポイントを参考に、無理のない範囲からブロックエディターに触れてみてください。慣れるまでのハードルは確かに存在しますが、乗り越えた先にはより自由度の高い、洗練されたサイトづくりが待っています。
クラシックエディターがいまだに選択肢として残り、使い続けるメリットもあります。一方で、ブロックエディターには“使いこなせれば大きなアドバンテージとなる”魅力が確かに存在します。
最終的な判断は運営サイトの特性やリソース状況にもよりますが、まずは一歩を踏み出すことで見えてくる世界があるのではないでしょうか。