100円もらえる喜びと、100円失う悲しみ。
同じ100円なのに、なぜか失う方が辛く感じませんか?
実はこれ、人間の本能なんです。
心理学では「損失回避」と呼ばれていて、人は得る喜びより失う痛みを約2.5倍強く感じるそうです。
この心理を理解すると、ビジネスでも日常生活でも、いろんなことが見えてきます。
例えば、こんな経験ありませんか?
セールで「30%OFF」と書かれていてもそんなに心が動かないのに、「今日で終了」と書かれていると急に買いたくなる。
これがまさに損失回避の心理です。
「安く買える」という得より、「もう買えなくなる」という損失の方が強く心に響くんです。
私の友人が経営する英会話教室では、この心理をうまく活用しています。
以前は「今なら入会金半額」というキャンペーンをやっていました。でも、反応はイマイチでした。そこで表現を変えたんです。
「このキャンペーンを逃すと、来月から15,000円多く払うことになります」
同じ内容なのに、申込みが3倍に増えたそうです。
面白いですよね。得する金額は同じなのに、「損をする」という見せ方にしただけでこんなに反応が変わるんです。
株式投資でも同じことが起きます。
含み益が出ている株はすぐに売ってしまうのに、含み損の株はなかなか売れない。「損を確定させたくない」という心理が働くからです。
でも冷静に考えれば、将来性のない株は早く売って、他の株に投資した方がいいはずです。
それでも売れないのは、損失回避の心理が理性を上回ってしまうからなんです。
日常生活でもよくあります。
- つまらない映画でも、チケット代がもったいないから最後まで見てしまう
- 使わない会員権でも、解約すると損した気がしてずるずる続けてしまう
- 合わない仕事でも、今までの努力が無駄になると思って辞められない
これら全部、損失回避の心理が働いているんです。でも、この心理を理解すれば、逆に活用することもできます。
例えば、部下のモチベーションを上げたい時。
「これをやれば評価が上がるよ」
より、
「これをやらないと遅れをとるよ」
の方が効果的かもしれません。
子供に勉強させたい時も、
「勉強すれば将来いい仕事に就ける」
より、
「勉強しないと選択肢が狭まる」
の方が響くかもしれません。
マーケティングでも同じです。
ダイエット商品なら、
「痩せて綺麗になれます」
より、
「このままだと健康を失います」
保険なら、
「安心が手に入ります」
より、
「万が一の時、家族が困ります」
投資なら、
「資産が増えます」
より、
「インフレで資産価値が目減りします」
こういう伝え方の方が、行動を促しやすいんです。
ただし、使い方には注意が必要です。あまりに恐怖を煽りすぎると、不信感を持たれてしまいます。
また、嘘や誇張は絶対にダメです。信用を失ったら、もう取り戻せません。
大切なのは、本当にお客様のためになることを、適切に伝えることです。
実際に失うリスクがあるなら、それをきちんと伝える。これは脅しではなく、親切なんです。
私も以前、歯医者に行くのをずっと先延ばしにしていました。「痛くないから大丈夫」そう思っていたんです。
でも、ある時歯医者さんに言われました。
「今治療すれば1本で済むけど、放置すると隣の歯も悪くなって、3本治療することになりますよ」
この一言で、すぐに治療を決めました。失うものが明確になったから、行動できたんです。
損失回避の心理は、誰にでもあります。それを否定する必要はありません。むしろ、うまく付き合っていくことが大切です。
自分の中にある損失回避の心理を理解して、本当に大切なものを失わないように。
そして、人に何かを伝える時は、得することだけじゃなく、失うリスクも適切に伝える。これができれば、自分も相手も、より良い選択ができるようになります。
人は失う痛みに敏感です。
でも、それは大切なものを守ろうとする本能。
この心理を理解して、上手に活用していきましょう。
それでは。