副業を始め、収入の柱を増やそうと意気込んだものの、現実は時間に追われるばかり。本業のパフォーマンスは落ち、家族と過ごす時間は削られ、肝心の副業も思うように進まない。そんなジレンマに陥っていませんか。
増え続けるタスクを前に、「もっと効率的に動かなければ」「もっと時間をうまく使わなければ」と自分を追い詰めてしまうのは、責任感の強いあなただからこそかもしれません。
しかし、本当に必要なのは、これ以上「やること」を増やすことなのでしょうか。
この記事では、発想を180度転換し、あえて「やらないこと」を決めることで、本当に大切なことに集中する時間と思考の余白を生み出すための「やらないことリスト」という考え方とその実践方法を、具体的にお伝えします。
なぜ私たちはいつも時間に追われるのか?「全部やろう」とする完璧主義
副業、本業、そして家庭。それぞれの領域で求められる役割をすべて完璧にこなそうとすると、私たちの時間はあっという間に食い潰されてしまいます。
この時間不足の根本には、無意識のうちに囚われてしまっている「完璧主義」という思考の罠が潜んでいます。
すべてのタスクを100点でこなそうとするあまり、優先順位が曖昧になり、結果としてどれも中途半端になってしまうのです。また、私たちの集中力やエネルギーは無限ではありません。
限られた資源を重要でないタスクにまで均等に配分していては、本当に力を注ぐべき場面でエネルギー切れを起こしてしまいます。
まずは、すべてを完璧にこなすことは不可能であると認め、有限な時間を何に投資するべきか、見極める視点を持つことが重要です。
「やることリスト」だけでは限界がある理由
多くの人が「ToDoリスト」、つまり「やることリスト」を活用しています。これはタスクを可視化し、達成感を得るためには非常に有効なツールです。
しかし、リストに並んだ項目を一つずつ消していく作業に追われるうち、私たちはいつしか「リストを完了させること」そのものが目的になってしまいがちです。
次から次へと追加されるタスクを前に、リストは長くなる一方。その結果、本来であればやる必要のない、あるいは優先度の低い作業にまで貴重な時間を費やしてしまうという本末転倒な事態に陥ります。
重要なのは、タスクの数をこなすことではなく、本当に価値のある行動に時間を集中させること。そのために、「やること」の前に、まず「やらないこと」を定義する必要があるのです。
マルチタスクが生産性を下げるという不都合な真実
同時に複数の作業をこなす「マルチタスク」は、一見すると効率的に見えるかもしれません。しかし、脳科学の研究では、マルチタスクが生産性を著しく低下させることが明らかになっています。
人間の脳は、本来一つのことに集中するようにできており、複数のタスクを同時に処理しようとすると、タスクを切り替えるたびに大きなエネルギーロスが発生します。
電話をしながらメールを打つ、資料を読みながら会議に参加する。こうした行動は、一つひとつの作業への集中力を散漫にし、ミスを誘発しやすくします。
結局、質の低いアウトプットしか生み出せず、後から手直しに余計な時間がかかるという悪循環に陥るのです。時間に追われていると感じる人ほど、このマルチタスクの罠にはまりやすい傾向があります。
発想の転換。「やらないことリスト」があなたの毎日を劇的に変える
ここで提案したいのが、「やることリスト」の前に「やらないことリスト」を作成するという、全く新しいアプローチです。
これは、日々の生活や仕事の中で、意識的に「やらない」と決めた行動や考え方をリストアップするものです。
一見するとネガティブなアプローチに聞こえるかもしれませんが、この「やらないこと」を明確にすることが、あなたの時間と心の余裕を劇的に生み出す鍵となります。何かを「足す」のではなく、不要なものを「引く」ことで、本当に大切なものが浮かび上がってくる。
この引き算の発想こそが、複雑な現代を生き抜くための強力な武器となるのです。
意思決定の回数を減らし、集中力を高める
私たちの脳は、一日に無数の意思決定を行っています。朝何を着るか、ランチに何を食べるかといった些細なことから、仕事上の重要な判断まで、そのすべてが精神的なエネルギーを消費しています。
「今日はこの作業はしない」「この会議には出席しない」とあらかじめ決めておくだけで、日々の意思決定の回数を大幅に減らすことができます。
これにより、脳の疲労が軽減され、節約できたエネルギーを本当に重要な判断や、創造的な思考に振り分けることが可能になります。
たとえば、「午前中はメールチェックをしない」と決めるだけで、最も集中力が高い時間帯を邪魔されることなく、副業の執筆や本業の企画立案といったコア業務に没頭できるのです。
罪悪感から解放され、精神的な余裕を生む
「誘いを断れなかった」「頼まれた仕事を断れなかった」といった経験は誰にでもあるでしょう。私たちは、他者からの期待に応えられないことに罪悪感を抱きがちです。
しかし、「やらないことリスト」は、自分の中で明確なルールを設けることで、こうした罪悪感から自身を守る盾となります。
例えば、「平日の夜8時以降は仕事をしない」というルールをリストに加えれば、その時間以降の連絡に対して「自分のルールなので」と、一貫性のある対応ができます。
これは、自己中心的な行動ではなく、長期的に高いパフォーマンスを維持し、家族との関係を良好に保つための、戦略的な自己管理なのです。やらないことを決める勇気が、結果的にあなたに精神的な平穏をもたらします。
具体的に何を「やらない」のか?今日から始められるリスト作成のヒント
「やらないことリスト」の重要性は理解できても、具体的に何をリストアップすれば良いのか、迷うかもしれません。重要なのは、いきなり大きなことをやめようとせず、自分の生活を見直して、時間やエネルギーを奪っている小さな習慣から手放していくことです。
ここでは「本業」「副業」「家庭」「自分」という4つのカテゴリーに分けて、リスト作成の具体的なヒントを紹介します。
【本業編】完璧な資料作りと不要な会議
本業においては、100点を目指す必要のない仕事が数多く存在します。例えば、内部共有用の資料に過度なデザインを施したり、一言一句を完璧に推敲したりすること。
多くの場合、60〜70点の完成度で十分なことがほとんどです。完璧主義を手放し、「この仕事の目的は何か?」を常に自問する癖をつけましょう。
また、目的が曖昧な定例会議や、自分がいなくても進む会議への出席をやめることも有効です。
アジェンダを事前に確認し、自分の貢献が必要ないと判断すれば、議事録の確認だけで済ませるという選択肢も検討しましょう。空いた時間で、より生産性の高い業務に集中できます。
【副業編】SNSの過剰なチェックと比較
副業、特にブログやSNS運用などを行っていると、常に情報を追いかけ、他人の動向をチェックしてしまいがちです。しかし、「情報収集」という名目で、気づけば何時間もSNSを眺めていることはありませんか。
これは時間を浪費するだけでなく、他人と自分を比較してしまい、モチベーションの低下や自己肯定感の喪失につながる危険な習慣です。
「副業中はSNSを開かない」「情報収集は1日30分まで」といったルールを設けましょう。他人の成功事例に一喜一憂するのではなく、目の前の自分の作業に集中することが、結果への近道です。
【家庭編】毎日の完璧な手料理と掃除
家庭と仕事の両立において、大きな負担となりがちなのが家事です。特に「食事は毎日手作りでなければならない」「部屋は常にきれいに保たなければならない」といった思い込みは、自分自身を苦しめます。
週に2日は惣菜や冷凍食品を活用する「手料理をやらない日」を設けたり、掃除は週末にまとめて行い、平日は最低限に留めたりするなど、家事のハードルを意識的に下げてみましょう。
便利な家電(食洗機、ロボット掃除機など)に投資することも、時間を生み出す有効な手段です。完璧な家事を手放すことで生まれる時間は、家族との対話や自分自身の休息に充てることができます。
「やらないことリスト」を成功させるための注意点
「やらないことリスト」は、作って終わりではありません。それを生活に根付かせ、効果を最大限に引き出すためには、いくつかの注意点があります。
リストをただの理想論で終わらせないためにも、これからお伝えするポイントを意識し、継続的に実践していくことが重要です。
家族や職場とのコミュニケーションを怠らない
あなたが何かを「やらない」と決めた時、それは周囲の人々にも影響を与える可能性があります。
例えば、あなたが職場の飲み会への参加をやめると決めたり、家庭での家事の一部を手放すと決めたりした場合、その意図を事前に共有しておかなければ、誤解や軋轢を生む原因になりかねません。
「副業に集中する時間を確保するため」「家族と過ごす時間を最優先するため」といったように、なぜそれをやらないと決めたのか、その背景にあるあなたの価値観や目的を丁寧に伝えましょう。
周囲の理解と協力を得ることで、「やらないことリスト」はよりスムーズに機能し始めます。
定期的にリストを見直し、アップデートする
あなたのライフステージや仕事の状況、価値観は常に変化していきます。
一度作成した「やらないことリスト」が、未来永劫にわたって最適であり続けるとは限りません。半年前は有効だったルールが、今では足かせになっている可能性もあります。
月に一度、あるいは四半期に一度など、定期的にリストを見直す時間を設けましょう。
そして、現在の自分にとって本当に不要なものは何か、新たに追加すべき項目はないか、常に自問自答し、リストを最新の状態にアップデートしていくことが大切です。
「やらない」で生まれた時間をどう使うか決めておく
「やらないこと」を決める目的は、時間とエネルギーの余白を作ることです。そして、その余白を何に使うかをあらかじめ計画しておくことが、リストを継続させる上で非常に重要になります。
目的もなくただ時間を空けてしまうと、結局はスマートフォンをいじったり、ダラダラと過ごしてしまったりと、新たな時間の浪費につながりかねません。
「SNSを見ない代わりに、副業のブログ記事を1本書く」「不要な会議に出ない代わりに、新しいスキルの学習に充てる」といったように、創出した時間を投資する先を具体的に決めておきましょう。
これにより、リストを実践するモチベーションが格段に高まります。
まとめ
副業、本業、家庭。これらすべてを完璧に両立させようとすることは、終わりなきマラソンを全力疾走するようなものです。私たちは、タスクをこなすために生きているのではありません。
より豊かで、充実した人生を送るために、仕事や副業に取り組んでいるはずです。その本来の目的を忘れないためにも、「やること」を増やすのではなく、まず「やらないこと」を決める勇気を持ちましょう。
「やらないことリスト」は、単なる時間管理術ではなく、自分にとって本当に大切なものは何かを見極め、人生の主導権を自分の手に取り戻すための哲学です。
まずは一つで構いません。今日、あなたが「やらない」と決めることは何ですか?