法人企業統計とは?売上高・利益・設備投資の見方を整理

法人企業統計とは?売上高・利益・設備投資の見方を整理
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「法人企業統計で設備投資が前年同期比〇%」というニュースを見て、数字の意味をつかみきれないまま読み飛ばしたことはないでしょうか。

四半期別と年次別で何が違うのか、設備投資はどこまでを指すのか。

この記事では、法人企業統計の位置づけと、売上高・利益・設備投資を読むときの確認順序を整理します。表の注記で押さえておきたい点も、あわせてまとめました。

目次

法人企業統計とは

経済ニュースに出てくる法人企業統計は、個別企業の決算を足し合わせた資料ではありません。

財務省が企業の売上高、利益、資産、負債、設備投資などを幅広く調べている統計で、正式名称は「法人企業統計調査」。統計法に基づく基幹統計調査として実施されています。

一つの数字で企業活動の良し悪しが決まる統計でもありません。調査の種類、対象範囲、比較期間、業種、資本金規模をそろえたうえで、企業活動の変化を整理するための基礎資料と考えると分かりやすいでしょう。

法人企業の活動を幅広く調べる

この調査の目的は、国内の法人による企業活動の実態を明らかにすることにあります。結果は経済・財政政策の基礎資料として使われ、四半期別GDP速報など国民経済計算の作成にも利用されています。

調査項目は売上高や損益だけではありません。資産、負債、純資産、固定資産の増減、人件費なども含まれます。

損益計算書の一部分だけを切り取るのではなく、財務構造や投資と合わせて企業活動を確認できるところが、この統計の性格をよく表しているでしょう。

集計結果は、全産業、製造業、非製造業のほか、細かな業種や資本金階層でも取り出せます。全体の変化が幅広い企業に共通するものなのか、それとも特定の業種や規模に偏っているのか。

分けて見られるので、見出しの数字だけでは気づけない偏りも確認できます。

上場企業だけの集計ではない

対象は、国内に本店を持つ株式会社などの営利法人等です。

上場会社だけを抜き出した決算集計ではありません。2008年度調査からは、金融業・保険業も調査対象に含まれています。

個別企業の決算短信は、一社の経営成績や財政状態を確認する資料です。対して法人企業統計は、多数の法人を業種別・資本金規模別に集計し、企業部門の全体像をつかむためのもの。

目的が違うので、統計の数字をそのまま個別企業の評価へ置き換えることはできません。

標本から全体を推計する

法人企業統計は標本調査です。条件に当てはまる法人を抽出し、その回答から母集団全体の値を推計します。

抽出の仕方は業種と資本金階層で分かれていて、金融業・保険業とそれ以外で線引きが違います。

区分全数抽出標本抽出
金融業・保険業以外資本金5億円以上資本金5億円未満の各階層
金融業・保険業資本金1億円以上資本金1億円未満

抽出された法人の回答をそのまま足した金額が、日本の法人企業全体の数字になるわけではありません。集計値、集計法人数、母集団法人数を使って推計値が算出されています。

この仕組みがあるからこそ、結果を読むときには標本誤差や抽出替えの影響も頭に置いておきたいところです。

四半期別と年次別の違い

法人企業統計には四半期別調査と年次別調査があります。違いは調査の頻度だけではありません。

対象範囲も、調べている計数の性格も別物です。ニュースで見た数字がどちらの調査によるものか、まずそこを確認しましょう。

項目四半期別調査年次別調査
対象範囲資本金等1,000万円以上の営利法人等営利法人等(1,000万円未満も含む)
調べる計数仮決算計数確定決算計数
公表時期原則3月・6月・9月・12月原則9月

四半期別は足元の変化を見る

四半期別調査の対象は、資本金、出資金または基金が1,000万円以上の営利法人等です。

4〜6月、7〜9月、10〜12月、1〜3月の各期について仮決算計数を調べ、結果は原則として3月、6月、9月、12月に公表されます。

売上高、営業利益、経常利益、設備投資などを3か月単位で追えるため、企業活動の変化を比較的早く確認できます。

速報性がある反面、確定決算ではないという点は押さえておいてください。四半期決算を行っていない法人が、概算値で回答する場合もあります。

細かな数値を確定値と同じ精度で扱わず、年次別調査との性格の違いを残したまま読むのがおすすめです。

年次別は年度の全体像を見る

年次別調査は営利法人等を対象に、その年度の確定決算計数を調べます。四半期別の対象から外れる資本金1,000万円未満の法人も、対象範囲に入ります。公表は原則として9月です。

確認できるのは、資産・負債・純資産、損益、配当、減価償却費、費用、役員・従業員数など。確定決算をもとに年度全体の財務構造を見たい場面に向いています。

ここで注意したいのが、「営利法人等を対象とする」という説明の読み方です。すべての法人から回答を得る全数調査、という意味ではありません。

年次別も標本調査であり、全数抽出になるのは一定の資本金階層だけ。対象範囲の広さと抽出方法は、別の話として区別しておきましょう

売上高・利益・設備投資の見方

ニュースで取り上げられやすいのは、売上高、経常利益、設備投資の3つです。

それぞれを単独で眺めるより、同じ対象範囲・同じ期間でそろえて並べたほうが、企業活動の輪郭をつかみやすくなります。項目ごとに、確認しておきたい前提も少しずつ違います。

売上高は活動規模の入口

売上高は、企業活動の規模を見る入口です。まず全産業の金額と増減率を押さえ、そこから製造業と非製造業、さらに業種別・資本金階層別へ降りていくと迷いにくくなります。

ただし、売上高が増えた理由まではこの数字から分かりません。販売数量が増えたのか、販売価格が変わったのか。

法人企業統計の金額は、数量要因と物価要因を自動的に切り分けてくれる資料ではないからです。必要に応じて、物価や生産に関する公式統計も併せて確認してください。

利益は金額と比率を分ける

利益を見るときは、どの利益項目かを先に確定させます。

公表資料には営業利益や経常利益などが並ぶため、表題や列名を省いて「利益」とだけメモすると、後から別の項目同士を比べてしまうおそれがあります。

次に、利益額と増加率を分けて見ましょう。前年の利益が小さければ、金額の変化がわずかでも増加率は大きく見えます。

前年が赤字だった場合は、そもそも通常の増加率では表しにくいケースもあるんです。

売上高経常利益率のような比率を使うと、売上高に対して経常利益がどの程度かを整理できます。ただ、業種によって事業構造は大きく異なります。

全産業の平均値だけで、個別企業や別の業種の優劣を判断するのは避けたいところです。

設備投資は定義を確認する

設備投資という言葉は同じでも、四半期別と年次別では求め方そのものが違います。

四半期別調査の設備投資

固定資産に新たに付加された額。土地の購入費は除き、整地・造成費など、その他の有形固定資産、建設仮勘定、ソフトウェアの新設額を対象とします。

年次別調査の設備投資

年度中の有形固定資産の増減額、ソフトウェア増減額、減価償却費、特別減価償却費を使って算出します。

算出方法が違う以上、四半期別と年次別の値を、同じ定義の連続した系列としてつなげないことが大切です。長期のグラフを作るときほど、ここでつまずきます。

公表資料では、ソフトウェアを含む設備投資と、除く設備投資が並んでいる場合もあります。増減率を比べる前に、自分がどちらの系列を見ているのか確認しましょう。

もう一点。設備投資の総額だけでは、それが更新なのか、能力増強なのか、デジタル化への投資なのかまでは分かりません。

全体の方向を把握したら、業種別やソフトウェアの内訳まで見ておくと理解が深まります。

前年同期比と前期比

四半期データでは、前年同期比と季節調整済前期比の両方が使われます。

比較している相手が違うので、同じ増減率として混ぜてしまうと話が合わなくなります。それぞれ何と比べた数字なのかを押さえておきましょう。

前年同期比は同じ季節と比べる

前年同期比は、当期を前年の同じ四半期と比べた変化率です。

4〜6月期なら、比較相手は前年の4〜6月期。同じ季節同士を比べられる一方で、1年間のどの時点で変化が起きたのかは見えにくくなります。

前年側に特殊な要因があれば、当期の変化率もその影響を受けます。増減率だけを控えるのではなく、当期と前年同期の金額、それに数期分の推移も合わせて確認してください。

前期比は直近四半期と比べる

前期比が比べるのは、直前の四半期です。直近の方向変化は追いやすいものの、企業活動には決算期や需要期といった季節性があります。

そこで使われるのが季節調整済前期比で、統計的な方法で季節要因を調整した系列を指します。原数値の前期比とは性格が異なるため、資料の見出しに「季節調整済」とあるかどうかを見てください。

季節調整値は見直される

財務省の結果ページでは、売上高、営業利益、経常利益、設備投資の季節調整済前期比が公表されています。そしてこの季節調整値は、毎期見直されます

新しいデータやモデルの見直しによって、過去の数値が変わることもあるんです。以前のニュースと最新の時系列で数字が食い違っていても、どちらかが直ちに誤りとは限りません。

数値を控えるときは、対象期、公表日、取得日、系列名を一組で残しておくと、後から見返したときに迷わずに済みます。

公式資料を読む手順

実際に資料を開くと、表も注記も多くて目移りします。手当たり次第に数字を拾うより、見る順番を決めておいたほうが結果的に早く読めます。

STEP
対象期の結果を開く

財務省の「法人企業統計調査」ページから、対象期の結果を開きます。四半期別か年次別か、対象期間と公表日をここで確定させます。

STEP
単位と比較方法を見る

金額なのか増加率なのか、単位は億円か%か。増加率なら、前年同期比、前年度比、季節調整済前期比のどれを見ているのかも押さえます。

STEP
主要項目を追う

売上高、利益、設備投資の順に追うと整理しやすくなります。全産業の数字を確認してから、製造業と非製造業、主要業種、資本金階層へ分けていきます。

STEP
表の注記を読む

金融業・保険業を含むか、設備投資にソフトウェアを含むか、季節調整済か、速報後の訂正がないか。順番としては最後で構いませんが、飛ばすと解釈を誤ります。

長期の動きを見たい場合は、財務省の時系列データやe-Statが使えます。異なる時点の表をつなぐときは、業種分類、調査項目、標本抽出に変更がなかったかも確認しておきましょう。

読み違えを防ぐ注意点

法人企業統計は、数字そのものより前提のほうでつまずきやすい統計です。読み違えにつながりやすい点を、順に押さえておきましょう。

まず、四半期別調査は標本法人の仮決算に基づきます。財務省は、仮決算整理が十分に行いにくい一部の業種では、決算整理に関係する事項に多少のゆがみが現れる場合があるとしています。

4〜6月期を見るときの注意

標本の抽出替えが行われるのは、毎年度の4〜6月期。前年中の増資や新設法人が反映され、母集団法人数も変わるため、4〜6月期と直前の1〜3月期の計数を単純比較するのは難しいとされています。

標本交替の影響を確かめたいときは、財務省が公表している継続標本だけの前年同期比が補助資料になります。ただし、通常の推計値と同じ数字ではありません。どちらの系列を使ったのかは記録しておきましょう。

金融業・保険業の扱いも見落としやすいところ。調査対象には含まれますが、公表表によっては金融業・保険業を除いた全産業や非製造業が示されます。

表題と注記を確認せずに、対象範囲の違う数字を並べないようにしてください。

そして標本調査である以上、推計誤差もあります。一つの四半期、一つの項目、一つの増加率から、景気や市場価格の方向を断定することはできません。

複数期の推移と内訳を確認し、ほかの公式統計と組み合わせて読むのが基本になります。

機械受注統計との違い

機械受注統計は、機械等製造業者が受けた設備用機械類の注文を調べる統計です。設備投資が実行される前の「受注」段階を捉えます。

一方、法人企業統計の設備投資が調べているのは、企業側の固定資産への新設額などです。

測定する主体も時点も違います。機械受注が増えたからといって、同じ時期の法人企業統計の設備投資が同じ幅で増えるとは限りません。

どちらが優れているという話ではありません。設備投資に関連する注文の動きを早めにつかみたいのか、企業の仮決算・確定決算から実際の投資額を確認したいのか。目的で使い分けましょう。

まとめ

法人企業統計は、国内の営利法人等を対象に、売上高、利益、資産、負債、設備投資などを調べる財務省の基幹統計です。上場企業だけの集計ではなく、標本から法人企業全体の値を推計しています。

四半期別調査は資本金等1,000万円以上を対象に仮決算計数を、年次別調査は資本金1,000万円未満も対象範囲に含めて確定決算計数を調べます。

設備投資の定義は両者で違います。ソフトウェアを含むかどうかでも数字は動くので、系列名まで見ておきたいところ。

  • 四半期別か年次別か、対象期間と公表日をそろえる
  • 金額か増減率か、比較方法は前年同期比か季節調整済前期比かを確認する
  • 設備投資はソフトウェア込みか除くかを見る
  • 金融業・保険業を含む表かどうかを注記で確かめる

季節調整値の見直し、4〜6月期の標本交替、金融業・保険業の対象範囲。この3つはとくに見落としやすいポイントです。

一つの増減率で結論を出さず、複数期の推移と内訳を組み合わせて読むこと。それが法人企業統計を読み違えないための基本になります。

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