米雇用統計とは?初心者向けに主要項目と見方を整理

米雇用統計とは?初心者向けに主要項目と見方を整理
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米雇用統計のニュースを見ても、非農業部門雇用者数や失業率、平均時給といった数字が並ぶだけで、どれをどう読めばいいのか迷うことはありませんか。

名前は似ていても、これらはそれぞれ別の調査が別の問いに答えるために出している数字です。

この記事では、雇用統計を作る2つの調査の違い、最初に確認したい3項目の読み分け、速報値や改定値を確かめる手順を、初心者向けに整理します。

目次

米雇用統計は2つの調査でできている

米雇用統計は、米国の雇用環境を映す代表的な統計です。正式な公表資料は「The Employment Situation」と呼ばれ、米労働統計局(BLS)が毎月まとめています。

ニュースでは「雇用統計」を一つの数字のように語ることも少なくありません。ところが公表資料そのものには、雇用者数や失業率、賃金、労働時間といった複数の項目が並んでいます。

最初に押さえておきたいのは、これらの項目が一つの調査から作られているわけではない、という点です。BLSは家計を対象にした調査と、事業所を対象にした調査を組み合わせて公表しています。

2つの調査は、対象も数え方も異なります。だから結果が同じ方向に動かない月があっても、それだけで矛盾や誤りと決めつけることはできません。

まずはどちらの調査から出た数字なのかを確かめる。これが読み方の出発点になります。

家計調査は人の就業状態を調べる

家計調査は、正式にはCurrent Population Survey(CPS)と呼ばれる調査です。日本語では家計調査や人口調査と訳されることもあります。

対象になるのは16歳以上の文民非施設人口で、就業者や失業者、労働力人口などを推計します。ニュースでよく目にする失業率も、この家計調査から作られる指標です。

BLSの定義では、失業者として数えるための条件が決まっています。仕事がなく、働くことができ、原則として直近4週間に具体的な求職活動をしていること。こうした条件を満たす人が失業者です。単に仕事をしていない人すべてを失業者に数えるわけではありません。

仕事をしておらず、求職活動もしていない人は、通常は労働力人口に含まれません。ここの区分が変わると、就業者数の動きが小さくても失業率が動くことがあります。

事業所調査は雇用件数を調べる

事業所調査は、正式にはCurrent Employment Statistics(CES)と呼ばれる調査です。企業や政府機関の給与支払い記録をもとに、非農業部門の雇用や労働時間、賃金を業種別に推計しています。

ニュースで「雇用者数が前月から何万人増えた」と報じられる数字は、多くの場合この事業所調査の非農業部門雇用者数を指しています。ここで数える単位は人ではなく、給与支払い名簿に載る雇用件数です。

事業所調査には、はじめから対象に入らない働き方もあります。農業従事者や自営業者などは、非農業部門雇用者数の対象範囲に含まれません。

だから非農業部門雇用者数だけで、米国で働く人すべてを表せるわけではありません。何を含み、何を含まない数字なのかを、確かめたうえで使いたいところです。

最初に確認したい3つの項目

公表資料には、細かな表がいくつも並びます。慣れないうちは、非農業部門雇用者数、失業率、平均時給の3つにしぼって読むのがおすすめです。まずはこの3項目で全体像をつかみます。

3つはそれぞれ別の問いに答える数字です。

雇用件数は「給与支払い名簿上の仕事がどう変化したか」、失業率は「労働力人口のうち失業者がどの程度いるか」、平均時給は「対象労働者の平均的な時給がどう動いたか」を示します。

どれか一つを総合得点のように扱うのではなく、役割を分けて読むのがコツです。

非農業部門雇用者数

非農業部門雇用者数では、前月からの増減が大きく報じられます。確認するときは、総数だけでなく業種別の内訳にも目を向けたいところです。

同じ増加幅でも、幅広い業種で伸びているのか、一部の業種に集中しているのかで中身は変わります。公表資料には、業種ごとの雇用変化が載っています。

月ごとの推計値には、標本誤差や非標本誤差がつきものです。速報値は、後から届く回答や訂正を反映して改定されていきます。

最初に出た増減だけを動かない事実のように扱わず、その後の改定も合わせて確認するのが安全でしょう。

失業率

失業率は、失業者数を労働力人口で割った比率です。労働力人口とは、就業者と失業者を合わせたものを指します。

ここで注意したいのは、分母が総人口ではないという点です。仕事をしておらず、失業者の条件にも当てはまらない人は、労働力人口の外に分類されます。

失業率を見るときは、就業者数や失業者数だけでなく、労働力人口や労働参加率にも目を向けてみてください。背景まで見えて、理解が深まります。

失業率が動いた理由を一つに決めつけず、それぞれの変化を分けて追う。そんな読み方が向いています。

BLSは通常の失業率に加え、労働力の未活用を別のとらえ方で示す複数の指標も公表しています。ニュースで「失業率」と言うとき、どの系列を指しているかは、元資料の表題や系列名で確かめられます。

平均時給

事業所調査では、非農業部門の平均時給や平均週労働時間も公表されます。平均時給は、賃金の動きを確かめる材料の一つになります。

平均値には、どの業種でどんな人が働いているかという構成の変化も影響します。平均時給が動いたからといって、すべての労働者の賃金が同じ率で変わったわけではありません。

前年同月比と前月比では、比べている期間が違います。どちらの数字を見ているのか、季節調整済みかどうかをそろえてから読みたいところです。

数字の向きだけで雇用環境の全体や市場の先行きまで決めつけないことが、平均時給とのつき合い方になります。

数字が同じ方向に動かない理由

非農業部門雇用者数が増えているのに、失業率も上昇することがあります。反対方向の動きに見えても、直ちに不整合とはかぎりません。

理由の一つは、出所となる調査が異なることです。非農業部門雇用者数は事業所調査、失業率は家計調査から作られます。標本も、対象範囲も、数える単位も同じではありません。

さらに、家計調査では労働力人口への出入りが失業率に関係します。仕事を探し始めた人が増えるなど、分母と分子が同時に変化することもあります。

人数と雇用件数は同じではない

家計調査は人を単位にします。一人が複数の仕事をしていても、就業者としては一人です。

事業所調査が数えるのは、給与支払い名簿に載った雇用件数です。同じ人が複数の事業所で働いていれば、その分だけ雇用件数として積み上がります。

この違いがあるので、家計調査の就業者数と事業所調査の雇用者数を、そのまま同じものとして引き算することはできません。

「人(people)」を数えているのか、「雇用件数(jobs)」を数えているのか。ここを意識するだけで、ぐっと整理しやすくなります。

家計調査(CPS)

人を単位に、就業・失業といった状態を数える調査です。失業率はここから作られます。

事業所調査(CES)

給与支払い名簿に載る雇用件数を数える調査です。非農業部門雇用者数はここから作られます。

対象範囲にも違いがある

家計調査は、自営業者や農業従事者なども就業者の範囲に含めます。事業所調査の非農業部門雇用者数では、これらの働き方は対象外です。

調査の対象期間についても、考え方に違いがあります。元資料のTechnical Noteには、参照週や給与期間、対象範囲が説明されています。

細かい差まで確かめたいときは、見出しの数字だけでなく、この技術注記までたどってみてください。

2つの調査には、それぞれ役割があります。どちらか一方が常に正しい、という関係ではありません。失業状態を知りたいのか、産業別の雇用件数や賃金を知りたいのかに応じて使い分けるのが現実的です。

発表資料を読む手順

雇用統計は、数字をひと目見て終わりにするより、出所と条件を順番に確かめたほうが読み違いを減らせます。次のような流れを、確認用の型にしておくと迷いません。

STEP
日程を確認する

BLSの公式スケジュールで、公表対象月と日時を確認します。

STEP
全体像をつかむ

Employment Situation Summaryで、主要項目の全体像に目を通します。

STEP
出所を見分ける

その数字が家計調査と事業所調査のどちらから出たものかを確かめます。

STEP
改定を確認する

前月値と前々月値の改定を確認します。

STEP
関連項目を見る

業種別内訳や労働参加率、労働時間などの関連項目まで広げて見ます。

STEP
定義まで戻る

Technical Noteで、定義や対象範囲、季節調整の条件を確かめます。

この順番なら、短いニュース見出しから元資料へさかのぼれます。目的は判断材料を増やすことであって、一つの数字から売買の結論を作ることではありません。

発表日時を公式日程で確認する

BLSは、Employment Situationの公表日程を公式サイトに掲載しています。公表時刻は米国東部時間で示されるので、日本で見るときは時差に気をつけたいところです。

米国では、夏時間と標準時間が切り替わります。同じ米国東部時間の発表でも、日本時間に直すと時期によって時刻がずれます。

祝日などで通常と違う日程になることもあります。決まった曜日や日本時間だけを覚えるのではなく、そのつど公式日程を確かめてください。

速報値と改定値を区別する

事業所調査の雇用者数は、最初に公表されたあとも改定されます。BLSが追加で届いた事業所の回答や修正を反映して、前月と前々月の推計値を更新していくためです。

最新月の増減を見るときは、同じ資料に載っている過去2か月分の改定も一緒に確認します。最新月の変化が小さくても、過去月の改定と合わせると印象が変わることがあります。

これとは別に、事業所調査には年次ベンチマーク改定もあります。標本から推計した雇用水準を、より包括的な雇用データに年1回合わせ直す手続きです。月ごとの改定と、この年次の改定は分けて理解しておきます。

季節調整の有無をそろえる

雇用には、学校年度や年末商戦、天候といった季節的な動きがあります。

BLSは、こうした毎年くり返す季節パターンの影響をならした「季節調整済み」の系列も公表しています。月ごとの変化を比べやすくするためです。

季節調整済みと調整前の数字は、そもそも目的が違います。前月比を比べるときは同じ条件の系列にそろえて、表の見出しにある「seasonally adjusted」か「not seasonally adjusted」を確かめてください。

季節調整は、現実の人数を消してしまう操作ではなく、あくまで比較しやすくするための統計的な処理です。推計方法が更新されると、過去の季節調整済み系列があとから改定されることもあります。

読むときの注意点

ここまでの読み方を踏まえて、雇用統計とつき合うときに気をつけたい点を整理しておきます。

まず、1回の発表だけで長期的な変化を決めつけないことです。月次統計には振れがあり、速報値はあとから改定されます。複数月の動きと改定の履歴を合わせて眺めると、方向が見えやすくなります。

次に、数字の強弱と金融市場の反応を一対一で結びつけないことです。

市場では物価や金融政策、企業業績など、いくつもの材料が同時に動いています。雇用統計だけから株価や為替の向きを言い当てることはできません。

予想値との差だけを見て、中身を飛ばさないことも大切です。

ニュースでは事前予想とのズレが注目されがちですが、公式統計そのものにも調査範囲と誤差があります。総数、内訳、改定、関連指標を分けて読みたいところです。

そして、平均値を自分の状況にそのまま重ねないことです。平均時給や失業率は、米国全体を推計した数字です。地域や業種、年齢によって、実際の状況はかなり変わってきます。

公式資料を読むときは、発表日だけでなく対象月も確かめます。「いつ公表された数字か」と「いつの雇用状況を表すか」は、別のことです。表の単位が人数なのか、千人なのか、比率なのかも見落とさないようにします。

まとめ

米雇用統計を読むときは、まず家計調査と事業所調査を分けて考えます。

失業率は主に人の就業状態を調べる家計調査から、非農業部門雇用者数や平均時給は事業所の雇用件数や給与記録を調べる事業所調査から作られます。

非農業部門雇用者数、失業率、平均時給の役割を分けます。人数と雇用件数、対象範囲、分母がそれぞれ違うので、数字がいつも同じ方向に動くとはかぎりません。

そして最後に、速報値だけで終わらせず、改定や季節調整、業種別内訳、対象月まで確かめます。

BLSのSummary、各種の表、Technical Note、公式日程を順にたどれば、短いニュース見出しからでも元資料に戻って確認できます。

雇用統計を読むときの軸は、出所(どちらの調査か)、単位(人か雇用件数か)、改定(速報か改定後か)の3つ。この3点を押さえるだけで、数字の受け止め方が変わります。

雇用統計は、米国の雇用状況を整理するための判断材料の一つです。単独の数字から相場や売買の結論を出すのではなく、定義と調査条件を確かめながら読む。その姿勢が、遠回りのようでいて確実です。

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