近年の投資ブームやNISA制度の拡充などを背景に、「米国株に投資してみたい」と考える日本人投資家が急増しています。その中でも注目度が高いのが、ハイテク企業や成長株の多いNASDAQ100という株価指数です。
NASDAQ100は、アップルやマイクロソフト、アマゾン、テスラといった名だたる米国のIT・ハイテク大手企業を中心に構成されており、過去に力強い成長を遂げてきました。そのため、NASDAQ100への投資は「成長企業にまとめて投資できる」という魅力があるのです。
しかし、実際にNASDAQ100に投資しようとすると、投資信託やETF、さらには為替ヘッジの有無など、さまざまな選択肢が存在します。今回はその中でも特に人気が集まっている2つの投資信託である
- SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド(以下、SBI)
- <購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド(以下、ニッセイ)
を比較し、それぞれの特徴や違いを詳しく解説します。
初心者の方でもわかりやすいように、投資信託の基本的な仕組みからコスト面まで丁寧にフォローしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
1. NASDAQ100とは?魅力とリスクをおさらい
1-1. NASDAQ100とは?
NASDAQ100は、アメリカのNASDAQ市場に上場する時価総額上位の非金融セクター企業100社で構成される株価指数です。とりわけIT・ハイテク分野の銘柄が多く含まれるのが特徴で、具体的にはアップル(Apple)、マイクロソフト(Microsoft)、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾン(Amazon)、テスラ(Tesla) などが名を連ねます。
特にここ数年は、クラウド・AI・電気自動車といった成長分野を牽引する企業が多く組み込まれており、世界的なテクノロジーの潮流に乗って高いパフォーマンスを示してきました。
1-2. NASDAQ100の魅力
- ハイテク・成長企業にまとめて投資できる
個別銘柄を選んで投資するのはリスクや手間が大きいですが、NASDAQ100に連動するファンドを購入すれば、主要なハイテク企業群を一括で保有できます。 - 過去の成長実績が高い
過去10年ほどの株価推移をみるとS&P500を上回る成長率を示す時期が多く、ハイテク企業の隆盛を象徴するような指数になっています。 - グローバルなIT・テクノロジーの潮流に乗りやすい
アップルのiPhoneやグーグルの検索エンジン、マイクロソフトのWindowsなど、世界中で使われるサービスやプロダクトを展開する企業が多く、今後も成長が期待できるとの見方があります。
1-3. NASDAQ100のリスク
- ハイテク偏重がもたらすボラティリティの高さ
ハイテク企業は景気や金利動向、規制リスクの影響を受けやすい面があります。好調なときは大きく上昇しますが、調整局面では下落も大きくなる可能性があります。 - ドル円の為替リスク
今回比較する2つのファンドはいずれも為替ヘッジなしなので、円高・円安の動向がリターンに直接影響します。円高に振れると、ドル建ての資産価値が目減りすることに注意が必要です。
2. 両ファンドの共通点:どちらもNASDAQ100に連動する投資信託
今回の主役である2つのファンド、SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンドと<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンドは、いずれもNASDAQ100指数に連動を目指すインデックスファンドです。
共通点1:NASDAQ100を対象とする
両者とも、上述したNASDAQ100に準拠した運用を行うため、ベースとなる構成銘柄やパフォーマンスの傾向はほぼ同じです。
共通点2:為替ヘッジなし
どちらも為替ヘッジを行わないため、ドル円レートの変動が基準価額(ファンドの価格)に反映されます。米国株の投資であれば一般的なスタイルですが、為替リスクに慣れていない方には注意が必要です。
共通点3:分配金なし(再投資型)
配当金や分配金を定期的に受け取るのではなく、ファンド内で自動的に再投資されます。複利効果を狙いたい長期投資家にとっては好都合で、運用効率が上がるメリットがあります。
3. 両ファンドの主な違い:コスト、投資手法、純資産総額の比較
3-1. 投資手法の違い
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SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド
こちらは、米国で大人気のETFである「Invesco QQQ Trust (QQQ)」を通じてNASDAQ100への投資を行います。QQQはNASDAQ100にほぼ連動するETFとして長い歴史と大きな運用資産を誇り、流動性が非常に高いのが特徴です。ETFが主体となる分、多少の指数との乖離や独自の組み換えルールが発生する可能性があります。
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<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド
こちらは、ETFを介さずにNASDAQ100指数に直接連動するファンドとして運用されています。指数との乖離が少なくなるよう設計されており、「純粋にNASDAQ100に投資したい」という方にとっては分かりやすい仕組みです。
投資手法まとめ
- SBI:QQQというETFを経由
- ニッセイ:指数そのものを直接トラッキング
ETFを使うことでリバランスのしやすさや取引コスト等のメリットがある一方、直接運用に比べて若干の指数乖離が生じる可能性があります。
3-2. コスト(信託報酬)の違い
コスト面は長期投資家にとって非常に重要です。運用期間が長くなればなるほど、信託報酬などの運用コストが累積してパフォーマンスに影響を及ぼします。
ファンド名 | 信託報酬(年率) |
---|---|
SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド | 0.2388% |
<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド | 0.2035% |
僅差とはいえ、ニッセイNASDAQ100インデックスファンドの方が安い設定です。
たとえば、信託報酬が0.04〜0.05%ほど違うとしても、10年・20年という長期になると、その差は複利の影響で大きく開いてくる場合があります。
3-3. 純資産総額(ファンドの規模)の違い
純資産総額は投資家がそのファンドにどれほど資金を拠出しているかを示す指標で、一般的には規模が大きいほど運用が安定しやすいと考えられます。
規模が小さいファンドでは、最悪の場合繰上償還(運用終了)のリスクもゼロではありません。
ファンド名 | 純資産総額(2025年時点) |
---|---|
SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド | 約59億円 |
<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド | 約2,870億円 |
- ニッセイの方が圧倒的に大きな純資産を持ち、安定感がある
- SBIはまだ設定から日が浅く、今後の資産流入によって拡大する可能性もあるため、現時点だけで評価するのは早計な面もあります。
4. なぜ「SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド」を選ぶのか?
結論だけ見れば、コスト面や純資産総額の点でニッセイが有利に見えるかもしれません。しかし、SBIにも独自のメリットが存在します。
4-1. QQQ(米国ETF)の特性を活かせる
「Invesco QQQ Trust」はNASDAQ100をトラックする米国ETFとして世界中で人気を集めています。流動性が高く、マーケットメイクもしっかりしているため、実質的に指数にかなり近い動きを期待できます。
さらに、QQQ独自の銘柄組み換えタイミングなどにより、NASDAQ100を微妙にアウトパフォームする可能性も指摘されています(ただし、逆にわずかにアンダーパフォームする場合もあるため、あくまで可能性ベースです)。
4-2. SBI証券のポイント還元
SBI証券をメイン口座として利用している場合、投信積立でTポイントやVポイントが還元されるなどのメリットがあります。
投信マイレージなどを活用すれば、実質的にコストを下げられるケースもあり、「単純な信託報酬の比較だけでは測れないお得感」があるかもしれません。
4-3. 将来的な純資産の拡大に期待
現在(2025年時点)では純資産総額が約59億円と比較的小規模ですが、ここから資金が集まって規模が拡大すれば、繰上償還のリスクが低下し、運用コストが引き下げられる可能性もあります。
特にSBIグループの販売力は大きいので、今後の成長に期待する投資家もいるでしょう。
5. なぜ「ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」を選ぶのか?
5-1. コストが安い
まずは何といっても信託報酬が安い点です。わずかな差とはいえ、長期保有を前提とするインデックス投資家にとっては見逃せません。
特に積立NISAのように20年スパンで積み立てると、数%のトータルリターンの差につながる可能性があります。
5-2. 純粋にNASDAQ100を追いかける運用
ETFを経由せず、直接インデックスに連動する設計がとられているため、指数乖離が小さくなる傾向が期待できます。
QQQとNASDAQ100のパフォーマンスはほとんど同じとはいえ、微妙な差異が気になる方にとっては「余計な要素を挟まない」ニッセイのほうが好ましいかもしれません。
5-3. 規模が大きく安定感がある
純資産総額が2,870億円(2025年時点)と非常に大きく、繰上償還のリスクも相対的に低いと考えられます。投資家が集中している分だけ運用が安定しやすいほか、売買に伴うコストの効率化も期待できます。
多くの投資家が利用しているファンドは比較的安心感があると考える人も多いでしょう。
6. 過去のリターンはどうだった?コスト差が重要な理由
6-1. 両ファンドの設定時期と実質リターン
両ファンドとも2023年に設定されたため、まだ運用実績が短く、過去5年間のリターンを直接比較するデータがありません。
ただ、参考としてNASDAQ100指数自体は、この5〜10年ほど継続的に堅調に推移してきました。大きな調整局面もありましたが、長期的に見るとS&P500よりも高い伸びを示す期間が多かったのは事実です。
6-2. 長期投資ではコストが積み重なる
インデックス投資の鉄則として、コスト(信託報酬)が低ければ低いほど、長期的なリターンが高くなりやすいという点が挙げられます。
例えば、年間信託報酬が0.20%と0.30%で0.10%の差がある場合、目先では微々たるものでも、10年・20年と複利で運用するうちに大きなリターン差となって現れてきます。
よって、コスト優位のニッセイファンドが長期投資向きと言われるのはこうした理由によります。
ただし、SBIファンドが提供しているポイント還元を加味すると、実質的なコスト差が縮まる可能性もあるため、自分の投資スタイル(主に証券会社との組み合わせ)を踏まえた判断が重要です。
7. 初心者が抑えておきたい3つのポイント
ここまでの説明を踏まえて、これからNASDAQ100投資を始めてみたい初心者の方が特にチェックすべきポイントを3つ挙げてみます。
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信託報酬や購入時手数料などのコストはトータルで比較する
どちらのファンドも購入時手数料は0円ですが、運用期間が長くなるほど信託報酬の差が効いてきます。さらに、証券会社ごとのポイント還元やキャンペーンも総合的に考慮して、自分にとって最適なコストパフォーマンスを探るとよいでしょう。 -
純資産総額や運用実績を確認する
規模が大きく安定しているファンドは、繰上償還リスクが低く運用コストも下がりやすい傾向にあります。一方、規模が小さいファンドでも将来資金流入が見込めるのであれば、早いうちに投資しておくのも手です。自分が納得できるリスクレベルかどうかをチェックしましょう。 -
為替ヘッジなしのリスクを理解する
円高になればドル建て資産の価値は下がる可能性があり、円安になればリターンを押し上げてくれます。為替は株式以上に予測が難しい要素があるため、長期視点でコツコツ積み立てるというスタンスをとるか、リスク許容度に応じて投資比率を調整しましょう。
8. どちらを選ぶべきか?タイプ別の選択基準
✔ ニッセイNASDAQ100インデックスファンドを選ぶべき人
- 可能な限りコストを抑え、長期投資のリターンを最大化したい
- NASDAQ100指数に忠実に連動するファンドがほしい
- 純資産規模が大きいファンドの方が安心感がある
✔ SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンドを選ぶべき人
- QQQ(Invesco QQQ Trust)の実績・知名度に魅力を感じる
- SBI証券をメインで使っていて、ポイント還元などを有効活用したい
- 若干のコスト差よりも、ETFによるリバランス効果などを狙いたい
- まだ純資産が小さいが、今後の成長を見込んで早めに投資しておきたい
9. さらに検討したいポイント:NASDAQ100に投資する他の手段は?
NASDAQ100に投資する手段は、今回紹介した2つの投資信託だけではありません。たとえば、以下のような選択肢も存在します。
9-1. 米国ETF「QQQ」を直接買う
米国ETFのQQQを日本の証券口座を通じて直接買い付けることも可能です。
- メリット: 信託報酬以外のランニングコストが低く抑えられることがある、分配金を自分で再投資する選択肢を持てる
- デメリット: 米国株取引手数料(1回ごと)、為替手数料、配当金再投資の手間などが発生する。また、NISA枠で買えるかどうかなども証券会社によって制限があることも。
9-2. 他のNASDAQ100連動ファンド
実は、証券会社や運用会社によっては似たようなNASDAQ100連動ファンドが複数あります。信託報酬の水準や運用方針、純資産の大きさなどを比較して、より自分に合った選択肢を探すのも良いでしょう。
9-3. S&P500や全世界株式との比較
米国株投資といえば、NASDAQ100のほかにもS&P500や全世界株式に連動するファンドが人気です。NASDAQ100はハイテク偏重の指数なので、もう少し幅広いセクターに分散したい場合はS&P500や全世界株式が選択肢となります。
自分のリスク許容度や投資方針に応じて、どの指数に投資するかを検討すると良いでしょう。
10. まとめ
今回は、SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンドと<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンドの2つを中心に、NASDAQ100連動ファンドを比較してきました。おさらいすると、下記のような特徴があります。
- 共通点: NASDAQ100指数に連動、為替ヘッジなし、分配金再投資型
- 投資手法:
- SBIは米国ETF(QQQ)を経由
- ニッセイは指数に直接連動
- 信託報酬: ニッセイの方がやや低コスト
- 純資産規模: ニッセイは2,870億円、SBIは59億円(2025年時点)
- メリット:
- SBIはQQQの流動性とSBI証券のポイント還元を活用できる
- ニッセイは低コストで規模が大きく、安定感がある
総合的に見ると、コストと安定性を重視するなら「ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」が有利という声が多いのは事実です。
しかしながら、SBIのファンドも今後の資産拡大やポイント還元などのメリットがあるため、必ずしも一択というわけではありません。ご自身が主に使っている証券会社や、投資に求めるスタイル(ポイント重視か、純粋なコスト重視か)を考慮したうえで選択すると良いでしょう。
最後に、NASDAQ100はハイテク企業を中心とした魅力的な指数である一方、相応のボラティリティと為替リスクを伴います。
初心者の方は、投資の基本である「分散投資」と「無理のない範囲での積立投資」を意識して、長期的な視点で運用を検討してみてください。投資にはリスクがつきものですから、焦らず冷静に、自分のリスク許容度に合った戦略を立てることが肝心です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任とリスクで行ってください。過去の実績やデータは将来の運用成果を保証するものではありません。
以上が、NASDAQ100連動型インデックスファンドとして人気の2商品、SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンドと<購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンドについての比較・検討となります。
ぜひご自身の投資スタンスに合わせて検討してみてください。
※本記事は特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではなく、投資アドバイスを目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任において行い、必要に応じて専門家にご相談ください。本記事の情報に基づく投資によって生じた損失について、当方は一切の責任を負いません。